「campy!bar」代表取締役社長・家弓(かゆみ)隆史氏
そんな思いから家弓氏は7年前、新宿二丁目のメインストリートに一号店の「Campy!bar」を立ち上げた。ガラス張りで中が丸見えの店内、派手な装飾を施した一号店は、ジェンダーやセクシュアリティの枠を超えた、さまざまな人たちとの触れ合いの場を提供したいという気持ちのあらわれなのだという。
メディアの影響によるオネエブームの到来で一時期にぎわいを見せていたという新宿二丁目だが、「ここ最近、人通りが落ち着いちゃったんですよね。平日は常連さんが来てくれるけど、金曜から週末にかけては観光の一見さんが前ほどいない」と家弓氏。
そこには、オネエの存在がトピックとして一段落したこと、新宿二丁目のそもそもの特殊性がライトな層を遠ざけてしまっていることが原因であろう、と氏は推測する。ジャンルを問わず数多くの人が集まるエリア、しかも渋谷のど真ん中に「Campy!bar」を進出させたのは、まさしくそこが一番の狙いだった。
「新宿二丁目という聖地から外れた分、少しはそういうテーマに興味があっても本拠地に乗り込むほどではなかったという人たちも来やすくなるんじゃないかと」
さらに、商業施設内に店を構えるということにもメリットがあるという。
「PARCOでショッピングを楽しんで、地下に降りてきたらたまたま賑やかで面白そうなお店があって、入ってみたら初めてオネエの人たちと過ごせた、くらいの気軽な感覚で私たちと触れ合ってほしいです」。
渋谷PARCOへの参入により、「Campy!bar」は新宿二丁目とは比べ物にならないほどの多様な人の目に留まっている。好意を寄せる者もいる一方、その存在をうとましく感じる者もいるのではないだろうか。家弓氏は、「私たちは、好き・嫌いと言われるよりも、無関心でいられること、存在を忘れられることが一番悲しい」と語る。
「お客さまの中には、興味本位やひやかし半分で訪れる方もいらっしゃるでしょう。でも、全然かまいません! 物見遊山でもいい。一見さんでも、おひとりさまでも、ガンガン来ていただいて、私たちと触れ合ってもらいたい。私たちを知ってほしいです」。