東大教養過程を経なければレイシストになるのか。東大卒業生とともに考える「真の教養とは」

東京大学

rerekjinf via Pixabay

「東大教養課程を経てないから教養がない」はない

 中国人への「人種差別発言」で東大”最年少准教授”(特任准教授)が解任された問題を取り上げた前回。    今回も引き続き、株式会社オトバンク社長の久保田裕也氏に「東大の教養課程」について語ってもらうこととする。  今回の騒動についての第一印象を聞くと、久保田氏はこう答えた。 「中国人は使えない? それは絶対にないですね。僕の同級生の中でも特に勉強熱心な一団がいて、そこには韓国人も中国人も沢山いました。日本語が上手かったですね。そして同級生の韓国人の一人は今シリコンバレーで起業していますけど、優秀な人は沢山いますよ」  筆者が米国の大学に行った時代でも、理系の大学院は半分以上中国人とインド人で「占拠」されていた。15億人もいればピンからキリまでいるのは当然だが、「ピン」の中国人がどれほど優秀なのかは少しでも目を開いていればすぐにわかることだ。  では、「東大の教養課程を経ていないからこの青年は教養がない」についてはどう思うか。  「そんなこともないと思いますけどね。教員によって違いはありますけど、教養課程の科目がそこまで難易度が高いかといえば、そんなことはないと思います。本当に専門分野の基礎の基礎を三か月か半年かけて見せてもらう、というくらいのものですからね。今までやったことがないから消化するのは難しい、という部分は多少ありますが、専門的な難しさがという部分までは全く入らないですから、それは買いかぶりすぎかな、とは思います」

例の彼には、コロナ騒動が収まったら中国への視察を勧めたい

 筆者に言わせれば、この青年の問題は「東大の教養課程」を終えていないことではないし、高専出身という点でもない。筆者が15年近く付き合っている友人で同じく高専出身で、現在は筑波大学の大学院に所属する研究者もいるが、このような問題は一切ない。  彼の問題は、「一般教養が高校生レベルにも達していない」の一点に尽きる。自著で「日本も敗戦後に資本主義に移行し」と堂々と書いており、「渋沢栄一はどこへ行った」と筆者が突っ込んでしまう状態である。同書の校正担当者は何をしていたのだろうか。うがった見方をすると、彼の一般社会常識のなさを意図的に強調しようとした可能性も考えられる。  別に東大の教養課程を受けなくともよい。高校の教科書をもう一度読み直し、現在のコロナウィルス騒動が終わってからで全然構わないので一度中国に行って成長を続ける企業・都市をいくつか見に行くことを強く勧めたい次第である。  久保田氏も強調する通り、本来学問とは学士号で極められるようなものではない。あくまでも入り口である。それでは印象に残っている授業はどのようなものか聞いてみた。  「面白かったのは、交通渋滞についての授業ですね。物理一般とか、そんな名前がついていたのかな。交通渋滞の原因は、科学的に説明できるんだというんですね。レポート課題で、僕が行ったのは東名高速の町田インターでしたかね。ラジオの交通渋滞情報で、いつも町田って渋滞しているなというのが頭に残っていて、写真を撮って、この混雑の形態は授業で出てきたXXXのパターンに限りなく近い、みたいなことを出して提出しましたね」
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教養はいつ、どこで役に立つか予測がつかないからこそ身につけておくべきもの
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