Sergiy Tryapitsyn / PIXTA(ピクスタ)
「ぁねがいたすけて 男のひとにつれさられているの」(原文ママ)
金曜日の深夜、私の携帯にこんなメッセージが送られてきました。
この一通のメールが、数百人の警察官を巻き込んだ大事件となり、主要メディアのニュースを賑わし、私を微表情の世界へといざなうことになろうとは、このとき夢にも思いませんでしたーー
こんにちは。微表情研究家の清水建二です。今回の98回、そして次回の99回の2回に渡り、私が微表情の世界に入り込むことになったある事件についてお話ししたいと思います。
16歳、”女子高生”、趣味コスプレ、誘拐された経験2回、今回3回目?
彼女の名前は、M。”16歳、職業、高校生、コスプレが好きな女の子”。一方の私は19歳。職業、浪人生。知り合って半年が過ぎても、いまいち本心が読めないというか、何を考えているのかわからない子でした。
「でも、まぁ、美人だからいいか」
そんな軽い気持ちの付き合いでした。
9月の蒸し暑い夜。布団に入って数十分。ウトウトとし始めたところに、メールを知らせる着信が入りました。身体を左に傾け、枕元にある携帯を取りあげ、メールを開きました。携帯画面に現れた一連の文字に、一瞬にして、身体中に冷や汗が流れるのを私は感じました。
「ぁねがいたすけて 男のひとにつれさられているの」
彼女は誰に連れ去られているのだろうか。
彼女はどれくらい危険な状態にいるのだろうか。
その男は、顔見知りなのだろうか。
自分には何ができるだろうか。
彼女が携帯を使っていることに男は気付いていないのだろうか。
隠れて携帯を打っているから、「ぁ」なのだろうか。
自分で解決できるだろうか。
警察にすぐに知らせるべきだろうか。
そんなことが頭をよぎりました。そもそもこのメールが瞬時に本気だと思った理由は、彼女が過去2回、男に連れ去られそうになったことがあったからです。
その男というのは、彼女の元指名客。彼女と知り合って少し経った頃、彼女は、過去に風俗店でアルバイトをした経験を申し訳なさそうに打ち明けてくれました。何でも20歳の彼女のお姉さんの身分証で身分を偽っていたそうです。その風俗店を辞めた後、彼女の元指名客がストーカーとなり、彼女は2回ほど危ない目にあっていたのです。しかし、いずれも未遂。危機一髪で彼女は難を逃れていたのです。
身代金額、「カネをあるだけ」
自分が何をすべきか、全然定まらない中、もう一通のメールが来ました。
「女はあずかった。返して欲しければ、カネをあるだけ持って、朝9:00にS駅前のH像の前に来い。」