「興業街」「文化発信拠点」の復活めざす浅草六区――そのカギは「祭りで異文化交流体験」!?
「浅草」と聞くと、最初に何を思い浮かべるだろうか。
浅草寺、雷門、仲見世、浅草神社、松屋(エキミセ)、そして川を挟んだ場所にあるスカイツリーとアサヒビールの眺め――これらはいずれも地下鉄浅草駅や東武浅草駅近くの風景であるが、かつて永年に亘って「浅草の中心」であった浅草寺西側の歓楽街「浅草六区」エリアのことを最初に思い浮かべる人は少ないかも知れない。
近年、この浅草六区エリアが「興行街の復活」を目指して大きく変わろうとしている。
さて、まずは「浅草六区」、そして「興行街の復活」ときいてもピンと来ない読者のために、その歴史から紐解いていこう。
浅草公園六区、通称「浅草六区」が歓楽街として賑わい始めたのは浅草寺の境内であった江戸時代のこと。明治時代に浅草寺の境内の一部を政府が浅草公園として整備することになり、「六区」はその区画整理の際の街区名に由来する。
当時の浅草は日本有数の歓楽街、多くの芝居小屋が並ぶ「興業街」として知られ、そのなかでも浅草六区地区は1890年に日本初の高層ビル「凌雲閣」が(関東大震災で倒壊)、1903年に日本初の映画専門館「電氣館」が開業するなど、時代の最先端をいく文化発信の拠点として持て囃された。
しかし、戦後しばらくするとその状況は一変。娯楽の多様化、そしてテレビ放送の影響もあり、早くも高度経済成長期には地盤沈下が深刻化。浅草六区の映画館や芝居小屋は次々と姿を消し、1974年には地域の核であった大型娯楽施設「新世界」も場外馬券売場(現:ウインズ浅草)となってしまった。
2003年にNHK朝の連続テレビ小説『こころ』の舞台になり、2005年には六区地区内につくばエクスプレス(TX)浅草駅が開業したことにより活性化の機運は高まったものの、2012年には最後まで残っていた映画館5館が全て閉館。六区の「興行街」としての歴史は危機的状況を迎えることとなった。
果たして、浅草六区はどのようにして「興行街・文化発信基地の復活」を目指すのか――そのカギとなったのは「祭り」と「外国人」であった。
浅草六区の復活を目指して動いたのは地域住民であった。2005年8月のつくばエクスプレス浅草駅開業を受け、地元から台東区に対して複数回「地区計画策定」を求める要望書を提出。それを受け2011年3月には緩和建築物の敷地面積の最低限度を定めるとともに道路斜線制限や隣地斜線制限などを緩和し、劇場・映画館・演芸場などの興行用途の誘導を図るという東京都台東区の条例「浅草六区地区・地区計画」が施行された。
ちょうどこの頃から、浅草では外国人観光客が急増。浅草六区では地区計画施行以降、2012年3月にロイヤルHD(ロイヤルホスト)グループの大型ホテル「リッチモンドホテル浅草」が、さらに2013年7月にパチンコ店と劇場・飲食店などのテナントで構成される大規模複合商業施設「マルハン松竹六区タワー」計画が発表(2018年に計画見直し・後述)され、同年12月にはレストランシアター「アミューズカフェシアター」併設のディスカウントストア「ドン・キホーテ浅草店」が開店。その後も開発は進み、2015年3月にホテルニューオータニグループの商業施設「ROX-3G」が、同年12月に錦糸町の東京楽天地が運営するアンテナショップを集めた観光商業施設「まるごとにっぽん」(東京楽天地浅草ビル)が開業、2019年12月現在も旧マルハン松竹六区タワー予定地で松竹・大和情報サービス・日本ビューホテルグループによる「(仮称)浅草ビューホテル別邸”HAKARAI”」が建設されつつあるなど、大手資本による浅草地区への投資が相次ぎみられるようになった。
こうした動きのなか地元商店会「六区ブロードウェイ商店街振興組合」が2013年9月に浅草六区誕生130周年記念事業として「浅草六区再生プロジェクト」を開始し、浅草六区ブロードウェイの道路空間を活用した社会実験として「浅草六区オープンカフェ」の開催や観光案内所開設、無線LANの整備を実施。さらに、2017年4月には浅草六区を再び日本一の興行街とすることを目的とした一般社団法人「浅草六区エリアマネジメント協会」が設立された。
そして今回生み出された新たな一手が「道路上を活用したイベントの開催による興行街の復活計画」だ。
日本一の興業街「浅草六区」は時代の最先端を行くモダンな街だった
外国人客の増加を追い風に「興業街の復活」を模索
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