令和の「ナンパ」は男性側の参入障壁が下がった?「ナンパ市場」の現状<アラサー独女の婚活・恋活市場調査6>

ナンパ ここ数年、ネットで「ナンパ」というワードをよく見るようになった。  オトコにカネが余っていたバブル期、一気に流行したナンパ……平成中期以降、一度は「一部のイケてる人たちだけのモノ」となっていたが、令和の今、その姿を変えつつある。  イケてるオトコは、ナンパなんてしないのが令和流だ。モテる自覚がある人ほど、自分から異性を漁りに行くようなことはしない。黙っていても声をかけられるし、友人から紹介を頼まれることも多い。今、ナンパはイケてるオトコのものではなく、イケてなかったオトコのものになっているのだ。

ネットを中心に「モテないオトコの自己肯定ツール」として流行

 ネットを中心に「恋愛工学」というものが流行したことも、ブームの発端として大きかったように感じる。「恋愛工学」という言葉の起こりは藤沢数希氏の『僕は愛を証明しようと思う』(幻冬舎文庫)という本だ。恋愛工学とは「心理学と進化生物学の理論を、金融工学のフレームワークを使ってナンパ理論としてメソッド化したもの」だ。要するに、こんなことしなくたってモテるヤツには必要ないもので、やっぱり非モテだけどどうにかモテたい……そんな男性でも女性と上手くコミュニケーションし、身体的コンバージョンにいたるための方法論なのだ。  これが瞬く間にネットに広がってから、ナンパは「女性と出会うためのツール」としてだけでなく「男の格を上げるもの、自信をつけるもの」としてのフィールドワークとして、も使われるようになった。  「ヘイ彼女」で女を立ち止まらせることができるのはイケメンだけなので、この声かけから連絡先交換のためのテクニック、実際にお持ち帰りに持ち込むまでのルートなど、ルーティン化して研究しているナンパ師が増えた。そうして恋愛工学を実践して独自化した情報商材や、フィールドワークとしてのナンパを綴るブログなども増えたため、なんというか当てずっぽうなものではなく、みんなが正攻法を研究するようになり、これまでのナンパ市場とはちょっと毛色が変わってきているのが現状だ。

ネットに溢れる「ナンパ成功法」に翻弄される人々

 では、こういう理論が流行したことで、実際にナンパ市場は需要と供給が合うことになってきているのかというと、これがなんとも言えない。  実情「恋愛工学的ナンパ」というものは、もはや女性側にも認知され始めるほど一種有名なものにはなってしまったため、結局リテラシーの高い女性からは敬遠されている節がある。SNSでもフェミニストたちから叩かれたりと炎上気味な側面もある。  その一方で、今のインターネットの傾向からも「出会いツール」はマネタイズがしやすいということから、最終的には課金が必要になる情報商材や、オンラインサロンが多数存在している。「絶対モテる方法教えます」とか「童貞が一ヶ月で女を〇人持ち帰った」などというアオリ文句と共に、1万円以上する課金商材がそこら中で売れているのだ。  その情報商材の中で優劣を決める方法はほぼなく「売れているものをとりあえず買う」というような感じで課金されていっているイメージ。実際に発信している恋愛コンサルを名乗る者の中には「月で100万円以上売れました」などと言っている者もいるのだが、結局は「恋愛」という人付き合いやコミュニケーションの部分にアプローチしていくものなため、売れているものを読めば絶対に誰でもモテるようになるわけではない。  それでも、性交経験率が下がっている現代日本では、ワラにもすがる思いで情報商材課金してしまう人々がたくさんいるのだ。情報商材屋を叩く筋合いはないが、中身があるかどうかは呼んでみないことには分からないし、人によって無意味で終わってしまう可能性があることは、消費者として利用する側にも十分気をつけてほしい部分ではある。
次のページ 
令和「ナンパ天国」は銀座から恵比寿に
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会