『マイ・ブロークン・マリコ』を読む壊れた私たち。SNSで死が拡散される時代に。
Twitterでバズった『マイ・ブロークン・マリコ』
一話を無料公開したツイートは4.8万リツイート14.9万いいねを記録し、書店に行けば当然のように平積みされ、さらにはレジ前に置かれたり、独自のコーナーを設置されるなど、作者のデビュー初単行本であることを考えれば、異例の待遇を受けていた。そんなに面白いのか、どんな話なのだろう。作者のツイートを見てみる。「友達の遺骨を奪って走る漫画です。」…ニッチか!一体、なぜこの漫画が多くの人に届くことが出来たのだろうか。友達の遺骨を奪って走る漫画です。(1話分お試し読みよろしければ) 1/9 pic.twitter.com/eW11fqP4fR
— ワカ(初単行本発売中🙏) (@MuicoMu) January 7, 2020
Twitterで拡散される「死」
作者のTwitter アカウント上で毎日更新されるこの4コマ漫画は、ワニが楽しそうに日常を過ごす様を描いているだけである。Twitter版のコボちゃんといった具合だ。死を題材にしていると言ったが、ただ単にタイトルで100日後に死ぬと「宣言」されているだけで、死の匂いは全く漂っていない。 しかし、その「宣言」こそが重要なのだ。この宣言によって、毎日『100日後に死ぬワニ』を読むことが、「ワニの死」へのカウントダウンに参加することに繋がる。自分以外の多くの読者ともに、リアルタイムで「ワニの死までの生活」を見届けられるという参加型の読書体験が、この漫画の最大に面白いところである。みんなが読んでいるから感想も言い合えるし、どのように死ぬのか、などと考察することもできる。 ネット上の「考察班」はただの日常コマの中から死へと繋がるモチーフを強引に見つけようとするが、それはあまりにも無理がすぎる。結局は、「100日後に死ぬワニはどのように死ぬか」というお題でより面白い死に方を発表しあう一種の大喜利とも化している。交通事故、病気、死刑、地球滅亡、食肉やワニ肉にされる、作者が自殺する…など死をネタにしている以上、不謹慎なものも少なくない。私自身、そんなツイートが流れてきて、不覚にも笑い、いいねしてしまう。 現に自殺が拡散されるのもTwitter である。今年1月には新宿で自殺を図った男性の写真がTwitterで拡散され、今年2月には女子高生の自殺配信と思われる動画が拡散された。それがフィクションであろと現実であろうと、「死」というセンセーショナルなものは拡散し消費される。これは、SNSの負の側面、あるいはSNSを使う人間の本性なのだろうか。「100日後に死ぬワニ」 pic.twitter.com/RUblRfVWTs
— きくちゆうき (@yuukikikuchi) December 12, 2019
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