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2008年 スマートフォンの登場
『Zynga、『FarmVille』『Mafia Wars』でいわゆる“スタミナ制”を導入』ということで、新しい課金方式の潮流が登場する。また、DeNAがモバゲータウンにアイテム課金制を導入する。ゲームの収益構造がどんどん変化していく。
この年の大きな事件は、iPhone の App Store がオープンしたことだ。また、世界初の Android 搭載スマートフォン(T-Mobile G1)が全米向けに発売された。世界中で Android の開発機が触れるようになったので、多くの人が Android 向けアプリケーションの開発を始めた。開発機は、Google から通販で入手することができた。
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2009年 『サンシャイン牧場』と『怪盗ロワイヤル』の爆発的ヒット
日本での大きな事件は、NTTドコモが、日本初の Android 搭載スマホ「HT-03A」を発売したことだ。この後、NTTドコモなど、国内キャリアは、iモードなどで得ていた地位を捨てざるを得なくなる。時代の流れとして、スマートフォンに移行せざるを得ない状況になった。
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2010年 ソーシャルゲームの時代。スマートフォンが新たなゲームプラットフォームとして台頭
世の中の開発の主戦場が、完全にスマートフォンに移行した時期だと記憶している。また、Appleが「
Flashを支持しない6つの理由」を公開した。
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2011年 ソーシャルゲームの全盛とフィーチャーフォン支配の終焉
コミュニケーションが、ガラケーからスマートフォンに移行した象徴として、この年 NHN Japan(現LINE)が、「LINE」をリリースしている。
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2012年 『パズドラ』インパクト
超弩級のゲーム『
パズル&ドラゴンズ』の登場である。ソーシャルゲームのネイティブアプリ化の流れがここで決まった。また、ソーシャルゲームへの高額課金が社会問題にもなった。「コンプガチャ」の景品表示法問題が顕在化した時期でもある。
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2013年 『モンスト』の大ヒット。ブラウザからアプリの時代へ
『
モンスターストライク』の大ヒット、『
艦隊これくしょん -艦これ-』のヒットの年。地味に大きなのは、NTTドコモが、iPhone を販売開始したことである。
以降は小粒な動きになるので、まとめて紹介する。
* 2014年 モバイルゲームの多様化が進む。「事前登録」方式の登場
* また、ドワンゴが、KADOKAWAと経営統合を発表した。
* 2015年 任天堂、DeNAと業務提携。スマホゲーム市場参入を表明
* また、『Fate/Grand Order』がヒットした。
* 2016年 『ポケモンGO』が社会現象となる
* 『ポケモンGO』の社会現象は、ゲームを遊ぶ人の外にまで波及した。
* 2017年 『荒野行動』『アズールレーン』など中国系タイトルの進出
* 2018年 クロスプラットフォーム時代の到来
詳細な年表と解説は、『
日本モバイルゲーム産業史』を直接見るとよいだろう。
駆け足で見て来たが、個人的には
2000年から2010年ぐらいの歴史が一番刺さった。それ以降はヒットしたゲームは多くあれど、
日本ではなくアメリカにモバイルの主導権は移ってしまった。そのため国内での大きな変化は見られなくなる。
さて、産業の歴史についてである。モバイル端末ゲームの保存はかなり難しいと感じている。ハードウェア自体が入手難になるというのもある。買い切りのゲームであっても、ハードウェアがなければ遊べない。また、登場当時のゲームが、月額課金で遊び放題だったのも大きい。運営がサービスをやめれば、そうしたゲームを入手することが困難になる。
独立して動くゲームも、実はそれほど安泰ではない。スマートフォン時代になり、OSがバージョンアップしたり、アプリストアがルールを変えると、アプリが使えなくなったり、配信停止になったりする。私自身も、過去にストアに登録したゲームやアプリを、バージョンアップが面倒で大量に消している。
また、オンラインゲームは、運営がやめればゲームは遊べない。終了したオンラインゲームの思い出を得たいというユーザーから、どうにかして欲しいという声が、たびたび上がっている。
物が残らない産業の歴史を記録するのは難しい。モバイルゲームは、本のように品物があり誰でも読めるものではない。ハードウェアを含んだ実行環境、運営という人手が必要だ。そういう意味では、数年間だけおこなわれていたお祭りを、どう保存するか考えるようなものだ。記録と継承が困難なことは容易に想像が付く。
そうしたこともあり、電ファミニコゲーマーの『日本モバイルゲーム産業史』は非常に注目している。情報を公開するだけでなく寄稿を募集しているので、多くの声が拾えればよいと思う。
<文/柳井政和>