中顔戦争の主戦場は
アフリカと、EUとアメリカ議会だ。次の巨大市場であるアフリカの情報と金融の覇権を巡る戦いと、EUとアメリカ議会では貿易と規制に関しての戦いとなる。
今後のアフリカで急拡大が見込まれる決済や仮想通貨に関してはすでに中国が各地で事業を展開している。
Alibabaが南アフリカでAlipayシステムのロードテストを行い、
WeChatはケニアのM-Pesa(オンライン送金サービス)と提携するなど、中国系企業が着々と電子商取引の仕組みを広げている。
Alibabaはエチオピア政府とeWTP(Electronic World Trade Platform)の構築で合意している。
中国の中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)が動き出すのも近い。いち早くCBDCを実現することになったのは、フェイスブックのLibra構想が発表されたせいとも言われている。(参照:
『China is cornering Africa’s ecommerce market』|2019年10月9日、Financial Times/
『China is going digital in Africa』|2019年11月26日、How we made it in Africa)
こうした動きはフェイスブックが世界的にやろうとしている仮想通貨Libraの構想と真っ向からぶつかることになる。フェイスブックはLibraの裏付けとなる資産の通貨から中国元を外す可能性が高い(ドルやユーロなどは入る)。
おもしろいことに中国とフェイスブックの争いについての記事は主戦場であるアフリカのメディアで取り上げられている。現地ではそれだけ実感されているということなのかもしれない。(参照:
『China is trying to beat Facebook by launching its own Libra stablecoin』|2019年8月20日、The South African)
同様の戦争はさまざまな場所で起きている。中国はその中でも活発であり、日本企業が中国由来のハッカー集団の攻撃を受けたニュースを目にした方も多いだろう。超限戦の時代において経済活動とサイバー攻撃は不可分になりつつあると言っても過言ではないだろう。正確に言えば、経済、政治、外交、サイバー攻撃などあらゆるものが展開される。ビジネスだけをやっていては国際競争には勝てない。
そう考えると中国と利害が対立する事業を行っている企業は「戦争」を仕掛けられる可能性がある、あるいはすでに仕掛けられている。今年に入ってすでに
三菱電機とNECがサイバー攻撃を受けていたことを公表している。今後もこうした戦争は世界に拡大してゆくだろう。
<文/一田和樹>