新型コロナショックで暴落……かと思いきや、ここのところ中国株が「右肩上がり」なワケ

上海の金融街

上海の金融街 (photo by shutterstock)

 新型肺炎騒動が世界に波及するなか、震源地の中国市場が注目を浴びているという。世界経済を揺るがしかねない新型コロナショックの中、世界の投資家はなぜ中国・香港株に注目しているのか?

投資家が注目する「中国・香港株」の「リバウンド」

 中国・武漢を震源地にした新型コロナウイルスの影響が、世界経済にも波及している。イタリアや中東でも感染が広がったことを受けて、1週間でNY市場は3500ドルも大暴落(3月2日に過去最大の1293ドルの急騰も記録)。日経平均も3000円近く下げ、一時2万1000円の大台を割り込んだ。  当然、中国も株価はダダ下がりのはず……と思う人が多いことだろう。実際、2月24日には上海総合指数が一時3%近くも下落した。だが、実は引けにかけて0.6%安まで回復。それどころか、同指数は新型コロナ騒動真っただ中にもかかわらず、2月27日再度2%近く下げただけで、ここ3週間あまり右肩上がりを続けているのだ。  ’90年代から中国株をウォッチし続けているTS・チャイナ・リサーチの田代尚機代表が解説する。 「2月末にかけての新型コロナ・ショックを除けば、上海が大きく下げたのは春節前の1月23日と、2月3日だけでした。新型肺炎の感染拡大により、中国国務院が急遽、春節休暇を2月2日まで延長して取引ができない状況が続いたため、3日の上海総合指数は一時8%超の下落を見せたのです。しかし、それ以降は上り調子で、足元でも1月の高値まで100ポイント前後に迫っています。背景にあるのは、中国当局の介入です。1月31日には中国人民銀行や証券監督管理委員会などが連名で“金融面のサポート”に関する通知を発表しています。そこには公開市場操作に加えて、リファイナンスや手形割引など、事実上モラトリアム(金銭債務の支払いの猶予)を認めるような施策も盛り込まれていました。これを受けて、3日には人民銀行が1兆2000億元(約19兆円)もの資金供給を行った結果、株価は下げ止まり、上昇に転じたのです。深圳市場に上場するテクノロジー系小型株からなる創業板(チャイナネクスト)指数などは、暴落直前の高値を16%以上も更新して上値を追い続けています」 上海総合株価指数

介入のない香港市場だが徐々に楽観ムード広がる

 一方で、中国当局による介入がなく、春節明けの1月29日から取引を再開した香港市場は一進一退の展開。ただし、徐々に楽観ムードが広がりつつあるという。香港在住の証券関係者が話す。 「上海市場に比べて、圧倒的に外国人投資家の比率が高いので、NYや欧州のマーケットの影響を受けやすいのが香港市場。そのため、NYダウの暴落に伴い、香港ハンセン指数も売り込まれましたが、底打ちは近いという見方が広まっています。というのも、ハンセン指数の構成銘柄で大きなシェアを握るのは中国平安保険やスマホ決済などでアリババに迫るテンセント、金融大手のHSBC。いずれも新型肺炎の影響を直接受けない業態の企業です。平安保険やテンセントに関しては、むしろ追い風となる可能性もあるため、ハンセン指数は値を戻していくだろうと予想できるわけです。その背景には’03年のSARS(重症急性呼吸器症候群)騒動の経験もある。当時、香港の死者は300人にも上りましたが、市内で最初の集団感染が発覚してから1か月後にはハンセン指数が底打ちし、その後3年以上も右肩上がりを続けました。現状、新型肺炎による死者が2人にとどまっていることを考えれば、SARSのときよりも底打ちが早まるのは当然でしょう」 香港ハンセン指数 上海は売買代金の8割以上を中国の個人投資家が占める一方で、香港は海外投資家が5割超を占める。それぞれの市場で売買可能な銘柄も異なるが、いずれも反発が濃厚だというのだ。そこには中国ならではの事情もある。
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「不景気になるほど相場は上向く」中国?
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