理不尽すぎる収容。罪なき夫を人質にし、家族全員の帰国を狙う。理不尽で血の通わない入管の行政処分

不法滞在を「助長」したという理由でAさんが収容される

入管への抗議イメージ AさんとBさんは中国にいたときから交際していた。2000年、Bさんは日本語学校で学ぶために来日し、Aさんも同じ目的で3、4か月後に来日。Aさんはその後、専門学校、短大へと進み、日本の会社に正社員として就職する。  Bさんは日本語学校に通うよりもアルバイトに時間を割くようになり、オーバーステイをしてしまう。だがAさんが日本で働き始めると、ゆくゆくは不法滞在者の妻との立場での結婚は避けようと、いったん中国に帰って改めて正式入国しようと決めた。  2006年、Bさんは東京出入国在留管理局(東京都港区。以下、東京入管)に出頭したうえで自主帰還した。入管から言われたことは「再入国には1年待たねばならない」ということだった。  ところがいざ帰国すると、Bさんは「他の女性が彼に言い寄らないか」と心配するようになり、1年を待ちきれずに姉の旅券を使って来日してしまったのだ。「なぜ待てなかったの」とAさんはBさんを叱った。とはいえ帰すわけにもいかず、2人はそのまま結婚して娘も生まれた。  月日が流れ、常々「人間はウソをついてはいけない」と娘を育ててきたBさんは、「そんな私自身が姉の名前で生きている」ことに良心の呵責を覚える。そして、これからは本名で生きようと、東京入管に出頭してすべてを正直に話した。  このときはBさんが少なくとも「在留特別許可」(法務大臣の裁量で在留を認める措置。以下、在特)はもらえると予想していた。ところが2016年4月、Aさんが東京入管に呼び出されて出頭すると、その場で収容されてしまう。理由は、「妻(Bさん)が日本での生活に必要な数々の手続きで、偽名を使ったのを知っていたはず。不法滞在を『助長』した」というものだった。

Aさんも在留資格剥奪され、一家全員就労禁止に

 こうして、一家3人は全員が在留資格をはく奪され、「仮放免者」として生きることになる。つまり「就労禁止」となったことで、収容されたAさんはもちろんのこと、Bさんもアルバイトすらできず、娘もこの先大学を出たとしても就職ができない身分に置かれたのだ。  ルール違反をしたのはBさんであり、Aさんではない。Aさんは一点のミスも犯していないのだ。なぜBさんが収容されなかったのか? おそらく小学生(当時)の娘の面倒を見る人間が必要との判断があったのかもしれない。  だがAさんとの面会では、Aさんは3年8か月も長期収容されているのに、Bさんのことを恨んでいなかった。Aさんはこう語った。 「私は助長していません。でも妻の不法滞在を知っていたのは事実ですから、それは否定できません」  Aさんは、Bさんの十分すぎるほどに心苦しい立場を理解しているのだ。
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正規在留者でも、ある日突然その権利を奪われる
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