震災や原発事故は「過去」ではない。原発事故に翻弄された飯舘村を描いたドキュメンタリーの続編、公開へ

帰村か避難継続か、迫られる村民

 記録の中心となっているのは、飯舘村の元酪農家、長谷川健一さん・花子さん夫妻だ。前作で酪農を廃業。今作では帰村してそば栽培を開始する。  畑を汚染土の仮置場として貸したり、帰村して農業を続けたりすれば国などからカネが出る。帰村しなければカネは出ない。畑などの土地を持たない村民・元村民にも金は出ない。飯舘村の線量が安全か危険かという単純な話ではなく、様々な事情との兼ね合いで村民たちは帰村か避難継続(村外への移住)かの判断を迫られる。  2020年1月時点で、帰村した村民は避難時の3分の1に満たない。帰村して農作業をするにも、用水路の手入れなどが必要だ。用水路は、帰村しない村民が持っていた畑も通過する。以前は共同で維持してきたが、今後は帰村した村民だけでやらなければならない。 「子供には戻ってこいとは言えない」 「遊びにもこないと思う」 「(自分の子供が)、生まれたばかりの子供を連れて遊びに来ると言ってたけど、ちょっと考えろと言ったら来なかった」  家族の間にも距離ができてしまう。  こうした一つ一つの事情、出来事とともに、その時点その時点での、人々の行動や言葉が記録され、「放射能」が人々の生活や心に重くのしかかっている様がありありとわかる。美しい農村風景が映し出されるシーンですら、そこにある「見えない怪物」の存在を意識させられる。  起伏のない静かな作品だが、時間の流れを追体験させられるためか、冗長さを感じない。むしろその静かさが、問題の根深さや複雑さ、当事者の苦しみや悲しみを際立たせている。

震災と原発事故は決して「過去」ではない

 今年は東京オリンピック・パラリンピックが開催される。招致の際に安倍晋三首相は福島第一原発の問題について「アンダー・コントロール(管理下にある)」と語り、安全性をアピールしたと報じられた。今年に入って政府は東日本大震災について、政府主催の追悼式を来年までとする方向で検討に入ったことを発表した。  震災と原発事故を過去のものであるかのように扱う日本。一方で本作は、そんな日本における飯舘村の現実を突きつける。  にもかかわらず作品そのものは、主義主張や善悪などの評価の提示を目指さず、またインタビューという形式に依存せず、現実を映すことに徹したストレートな作りだ。長期にわたる密着取材のなせる業だろう。  良質なドキュメンタリーに触れるという意味でも、前作(DVDあり)と合わせて多くの人に観てもらいたい。  ポレポレ東中野では、2月29日の公開日から3月11日まで、毎日1回、上映後のトークショーも開催される。 <文/藤倉善郎>
ふじくらよしろう●やや日刊カルト新聞総裁兼刑事被告人 Twitter ID:@daily_cult4。1974年、東京生まれ。北海道大学文学部中退。在学中から「北海道大学新聞会」で自己啓発セミナーを取材し、中退後、東京でフリーライターとしてカルト問題のほか、チベット問題やチェルノブイリ・福島第一両原発事故の現場を取材。ライター活動と並行して2009年からニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(記者9名)を開設し、主筆として活動。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)
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ポレポレ東中野
東京都中野区東中野4-4-1 ポレポレ坐ビル地下
TEL 03-3371-0088

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原発さえなければ 避難指示解除の飯舘村を描くドキュメンタリー
2月29日まで

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