
2月29日から
ポレポレ東中野で、映画『
サマショール ~遺言 第六章~』(監督=豊田直巳・野田雅也)が初公開される。
2011年の福島第一原子力発電所の事故で村民が避難した福島県飯舘村の住民に密着したドキュメンタリーで、『
遺言~原発さえなければ』(2013年製作)の続編。前作が5章立て(3時間45分)の超大作だったため、本作は作品としては2作目ながら「第六章」にあたる。上映時間は1時間53分。
飯舘村は福島第一原発から約40キロ。浪江町や大熊町などと比べて遠いものの、事故直後の風向きの影響などから汚染がひどく、全村民が避難した。2017年3月に「避難指示」が解除され、帰村が可能となっている。
豊田・野田両監督は、原発事故直後から村民に密着。前作とあわせ10年にわたる長期取材を行なってきた。本作は、そのうち2013年製作の前作以降、避難指示解除の前後をまたいだ現在までの記録だ。
前作と同様に本作も、「反原発」を訴える内容ではない。活動家の記録でもない。原発事故後の農村の風景、人々の避難生活や帰村後の生活、その間の状況の変化や人々の葛藤を、黙々と映し出している。
住民による東電への申し入れ、専門家による空間線量の調査、住民が自主的に行なう土や植物などに含まれる放射性物質の測定、無人になった自宅の手入れなどに戻る一時帰宅の様子、避難指示解除をめぐる村民と村長との話し合い、避難指示解除後の農作業、村民の自宅で監督自身が酒を酌み交わしながら語らう様子。村民が、チェルノブイリ原子力発電所の事故で廃墟となったプリピャチの町を訪れ、飯舘村の数十年後に思いを馳せる場面もある。
チェルノブイリ周辺30キロ圏内は現在も立ち入り禁止だが、そこには複数の村や集落がある。中には自らの意思で村に戻り、現在も住み続けている老人たちがいる。ウクライナ語で「サマショール(自主帰還者)」と呼ばれる。本作のタイトルとなっている言葉だ。
「チェルノブイリに行くまでは、俺は(飯舘村に)帰ると思っていた。でもチェルノブイリを見て考えてね……。でも帰る」