急増する敵対的TOBは、実は株価が上がりやすい!? 一般投資家が見るべき銘柄は?

 日本では長らくタブー視されてきた敵対的TOBが急増している。なかには、株価が大きく値を上げるケースもあるが、今回、その攻略法を探ってみた。

親子上場廃止、含み資産株、上場基準厳格化etc. 急増する[TOB銘柄]を狙い撃て!

前田建設工業の本社オフィスがある飯田橋グラン・ブルーム

前田建設工業の本社オフィスがある飯田橋グラン・ブルーム
photo by Takanori-asahara via Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

 ゼネコン準大手の前田建設が、グループの実質的な子会社・前田道路に対して敵対的なTOB(株式公開買い付け)を仕掛けている。前田建設は、前田道路の株式の25%を保有する筆頭株主だが、「一体化すれば総合インフラ企業になれる」との理由から一方的に公開買い付けを発表。これに対し前田道路が資本関係の解消を求めるなど、徹底抗戦の構えを見せているのだ。両社の取引は売上高の1%未満と、親子関係から生まれるシナジーはそれほど期待できないが、なぜ、そうまでして前田建設は完全子会社化を目指すのか? 投資メルマガ「兜町カタリスト」の櫻井英明編集長が説明する。 「前田道路の前身は高野組(高野建設)だったが、経営が傾き、’01年に救済に名乗りを上げた前田建設のグループ会社となった。“親子ゲンカ”といわれているが、前田道路にすればもともとアカの他人なのです。しかも、前田道路は業績好調で独力で十分やっていけるので『相乗効果が見込めない』と反対するのも当然でしょう」  日本では長らくタブー視されてきた敵対的TOBがここにきて増加の兆しを見せている。下記に主なTOB案件を掲げたが、’19年だけでも国内企業間の敵対的買収は5件と、過去最高だった’05年の6件に次ぐ水準まで増えているのだ。楽天証券チーフ・ストラテジストの窪田真之氏が話す。 「欧米とは対照的に日本の企業経営者は、たとえ独自の技術を持っていても、自社の株価が安いことをそれほど気にしない人が多い……。だから、ハゲタカファンド(外資系買収ファンド)や村上ファンドが日本企業を標的に買収に乗り出したときも、日本社会は冷ややかな目で見ており、過去に行われた強引な敵対的TOBが、国民的批判に晒されることもありました。その後、日本で活動しづらくなったハゲタカファンドは撤退。資産価値と比べて割安な企業は多いが、これに注目する投資家がいない状態が長らく続いてきたのです」

TOBが増えつつある背景

 近年、「敵対的」「友好的」を問わずTOBが増えつつある背景には何があるのか。 「市場が縮小するなか、企業は成長余地を求め、今後、業界再編は一層進む。昔は乗っ取りに等しかった敵対的TOBでさえ、買う側、買われる側双方の補完目的に変わった。また、市場がスピードを求めるようになり、素早く買収できるTOBが増えたのです」(櫻井氏)  ほかにも理由はあるようだ。窪田氏が続ける。 「’06年は買収防衛策の導入ブームで、多くの企業が株主の安定化を図ったが、ハゲタカファンドが去って十数年たち、やめてしまった企業も多い……。いわば丸腰の状態だから、仕掛ける側にとってはTOBをやりやすい状態にある」  友好的な第三者に自社株を買ってもらう「ホワイトナイト」はTOBを仕掛けられた側の防衛策だが、日常的な買収予防策すら怠っているが実状だ。お買い得な企業の多くがノーガードに等しいので、当然、買われる側の企業の株価は跳ね上がる。昨年、旅行大手のH.I.S.が敵対的TOBを仕掛けたユニゾHDは倍以上に高騰し、今も高止まりしたままだ。
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敵対的TOBは値を上げやすい
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