初対面の出会いを警戒する日本で「相席による出会い」がここまで浸透したのは『相席屋』のおかげかもしれない。2014年に株式会社セクションエイトが立ち上げた、初めて会う男女をマッチングさせる飲食店『相席屋』。都会ではHUBなど、ごく限られた場所でのみ受け入れられていた「相席による異性との出会い」が、相席屋の浸透によりさらにカジュアルになったといえる。
筆者はその当時女子大生だったが、マッチングアプリをやり始める人がチラホラ出てきた頃に登場した相席屋の当初の勢いは凄まじかった。渋谷や新宿などの店舗は行列ができるほどの人気で、電話予約をしてまで相席屋に通って、次から次へと知らない人と話した。
2020年現在では、「相席」業態を取り扱う飲食店の数もだいぶ増え、それぞれの店が個性を出して顧客を取り合っている。空前のブームは去ったような雰囲気もあるが、令和の「出会い系飲食店」の今は、どうなっているのだろうか。
現在、出会い系飲食店は大きく2つのパターンに分けることができる。店員のサポートによるしっかりとした相席を提供するタイプと、立ち飲みバー形式で客同士の声かけがラフに行えるタイプだ。
現在、都会では特にラフにナンパできる立ち飲みバータイプの店舗が人気を博している。バータイプのメリットは2つある。1つ目は相席タイプの飲食店よりも回転が早く、料金も相席タイプのものより安く設定されていることが多いことだ。相席タイプの飲食店はたいてい女性の料金が無料、または低価格なのに対し、男性は料金が普通の居酒屋で飲むよりは高いくらいにガッツリと財布から飛んでいく。
2つ目は、バータイプは相席タイプよりも店員のサポートは少ないが、客が自由に店内の異性に声をかけられるため、自分のタイプの異性にダイレクトに狙いを定められることだ。初対面の声かけに抵抗がない人はまずバータイプの方がコスパがいい。恵比寿や銀座などのナンパ街では特に、このバータイプの店舗が混み合っている。
マッチングアプリやストリートナンパの浸透で、日本の出会いへの警戒心は昔に比べて下がりつつある。出会いにある程度量を求める、いわゆる「コミュ強」と言える人々はバータイプの出会い飲食店が向いていると言える。
しかし、相席タイプの飲食店にもならではの良さがある。席につくまで店員にサポートされるシステムの相席タイプは、ナンパで自分から声をかけるのは躊躇してしまう人にはありがたい。一定の需要があるからこそ、都会ではバータイプがどれだけ人気でも、相席タイプの飲食店も廃れてはいない。