ヨーロッパで格安航空(LCC)がまた1社倒産した。僅か15年前の2005年に設立されたエアー・イタリーだ。2018年2月までは旧社名メリディアナ航空と呼ばれていた。
エアー・イタリーは2022年には利用乗客者数1000万人、機材50機を構えるというプランを持っていた航空会社だった。ところが、2018年が1億6400万ユーロ(194億円)の赤字、2019年も2億ユーロの(236億円)の連続赤字ということで、持ち株51%を所有している産業グループのアリサルダ(Alisarda)が今後の投資を控えるという決定を下した。それが引き金となって経営陣は破産宣告をすることを決定した。(参照:「
Aviacionline」、「
VozPopuli」)
残り49%の株はカタール航空が所有しているが、2つの理由から同じく新たに資金を投入することを拒否した。
ひとつはアリサルダが今後も経営を続けることを拒否しているということから、今後のエアー・イタリーの伸展性は非常に低いということ。もうひとつは、カタール航空が資金を投入して持ち株を増やすとEU圏外の企業が過半数の株を持つことになり、EUの航空規定によって圏内での同航空の自由な路線網の構築ができなくなるという理由からである。
現在のエアー・イタリーの保有機材は9機、ベース基地はミラノのマルペンサ空港で、サルデーニャ島の住民にとっては重要な航空会社であった。
2000年から2016年までにヨーロッパで154の航空会社が誕生したが、これまで107社が市場から姿を消している。例えば、スペインだとその数は30社に及ぶ。(参照:「
Aviacionline」)
その中にフトゥラ(Futura)という航空会社があったが、チャーター便が専門だった。筆者が記憶しているのは、この航空会社の機材を利用してバレンシアからイタリアのミラノの家具展示会に出展するのにバレンシアの家具メーカーのスタッフが貸し切りで往復していた。筆者もそれに2年続けて同乗したことがあった。
現在のヨーロッパの航空市場は
5つのグループが63%の市場を占有しているという。この5つのグループとは、
「エールフランスーKLM」、「IAG(ブリティシュ・エアウエイズとイベリア航空の連合)」、「ルフトハンザ」、「ライアンエアー」、「イージジェット」で、この各グループの傘下にLCCの航空会社も所有している。
このような寡占市場にあって、残りの市場を中小の航空会社が乗客の奪い合いをやっている。LCCの登場で乗客も大幅に増えている。しかし、航空会社にとって一番の問題は燃料コストの負担である。一般に燃料コストは各フライトの50%を占めるとされている。
そのコストを補填する意味でライアンエアーなどが採用している手荷物までチャージを請求するといった方法でコストを削減している。現在のライアンエアーでこのようにしてチャージで稼ぐ金額は同社の売上の30%を占めるまでになっているという。