パチンコとは本来「装置産業」であったが、近年は時間消費型レジャーというカテゴライズがされるなど、お客様に娯楽を提供する
接客業という色合いが急激に濃くなった。店内装飾や休憩室の設置、豪華なトイレ、テレビも見られるし、雑誌や漫画も読めるし、足湯すら設置しているパチンコ店も珍しくはない。
お客様に快適な環境を提供するということが、パチンコ店の在り様として定着するなか、スタッフは、一昔前のような「客の監視係」ではなく、「お客様にサービスを提供するスタッフ」となったし、店舗やスタッフ内の意識は「接客業」を営んでいるという意識が強くなった。
接客業であるならば、マスクの装着はお客様に失礼にあたるのではないか。
読者諸氏には、このパチンコ店の悩みにピンとくる人が少ないかも知れない。
では例えば、老舗旅館の女将が玄関口にお客様を迎えにあがる時にマスクを装着しているというのはどうか。例えば高級キャバクラの女性スタッフがマスクをしていたらどうか。勿論、単純に比較するのもおかしな話ではあるが、少なくとも接客業のスタッフとして、マスクはお客様とのコミュニケーションの隔たりでしかない。ともすれば、お客様に不要な心配を与えてしまうかも知れない。そういう考え方が、スタッフのマスク装着をためらわす理由だ。
新型コロナウイルスに関する報道が連日連夜流されるなか、パチンコ店に訪れる客の側にも、また働くスタッフの側にも、感染に対する危機意識が芽生えている。
筆者は思う。
世の中の、ウイルスに対する「怖がり方」が正しいのか否かはさておき、今のように危機意識が煽られる状況下では、「接客業のマスク」に対する客とスタッフの相互理解が成立するのではないか。社会公序の観点からも、お客様保護の観点からも、そして働くスタッフの保護の観点からも、パチンコ店のスタッフがマスク装着していることに誰も異議は唱えないだろう。
マカオのカジノが、出入する従業員が新型コロナウイルスに感染したという理由で、14日間の営業停止を発表した。カジノの経営にどれだけの影響が出るのか。どれほどの売上が無くなるのかは分かりかねるが、このニュースは、パチンコ店にとっても対岸の火事ではない。
お客様ファーストであれ、従業員ファーストであれ、必要最低限の予防策は講じて然るべきだ。
<文/安達夕>