高校と同様に幸福の科学学園中学校の生徒数も調べた。中学の生徒数は高校入試時に補充可能なので大学の定員補充には直結しないが、やはり脱落者の多さと生徒数減少が目につく。
定員は那須校が60人、関西校が70人で、2校合計130人。2013~2016年度の1学年の生徒数は2校合計でほぼ定員を満たしているが、
2017年度から本格的に定員割れ。2018年は那須校が定員を超える生徒を入学させたため2校合計で回復を見せるものの、2019年の2校合計は過去最低を更新して定員充足率は85%程度だ。
中学の定員割れの原因は明らかに関西校だ。関西校「1学年」の数値を見れば、開校以来、毎年1学年の数が減少し、常に過去最低を更新していることがわかる。2019年度は定員70人に対して56人しかいない。
滋賀県発表の今年の中学受験出願状況を見ると、関西校中学の出願者は58人。出願者全員が入学しても今春の入学者数は前年並みの定員割れとなる。
中学の表も高校同様に、赤線が幸福の科学大学開設1年目に入学する世代とそれ以前の世代の境界を示している。2015年度入学世代が大学1期生にあたり、定員を割った2017年度入学世代は大学3期生にあたる。
中学の脱落者は高校ほど多くないものの、各校ほぼ毎年1~2名はいる。那須校中学の2016年度入学世代はやや多く、1~2学年の間の1年間だけで64人から58人へと、ほぼ1割減った。
高校も含めて見渡しても、1年生が全員3年生まで進めた世代は那須校中学の2013・2017年度入学世代のみ。関西校は開校以来、中学・高校ともに全ての世代に脱落者がいる。
目につくのは入学後の脱落者だけではない。前出の育伸社発表情報によれば、関西校中学の2019年度入試では74人が受験し全員が合格。この時点では定員を満たしていたが、県発表の情報では同年春の中学1年生は56人で、一転して定員割れ。なんと18人も消えている。
受験する信者の子供は定員程度には存在しているが
実際に入学しない「学園離れ」だ。
この2019年度入学者は、大学5期生に当たる世代である。
まとめると、幸福の科学学園の高校は大学1・2期生になる世代が定員割れ。仮に中学の定員割れを高校入試で補充できなかった場合は、大学開設3~5期生にあたる世代も定員割れの状態が続く。中高ともに途中脱落者が目立つことから、実際の卒業者数はさらに少なくなることが予想される。
これが最新の数値であり、状況が好転する可能性を示唆するデータはない。この状況で幸福の科学大学が仮に認可された場合、何が起こるのか。
大学開設後も、HSU開設時と同様に学園の高校卒業生の8割が幸福の科学大学に進学すると仮定しよう。その人数は、大学1期生にあたる高校2018年度入学世代が149人、大学2期生にあたる同2019年度入学世代が122人となる。
幸福の科学大学の定員は4学部で300人。その年の学園卒業生だけでは大学の定員の半分も満たすことができない。
HSU開設当初は、すでに入学していた一般の大学を中退してHSUに入る学生信者も続出した。大学が認可された場合、今度はHSUに在籍する「学生」が幸福の科学大学に入り直すことが予想される。
むしろそうさせなければ定員を充足できないだろう。現時点でもHSUは社会人や年配の信者を「シニア学生」として入学させている。関係方面のへの取材の感触からは、それでも定員を満たせているのかどうか怪しいくらいだ。
ただでさえこの状態なのに、2021年度から学園の定員割れの波が押し寄せてくるのだから、なお深刻だ。
以前本誌で掲載した
終わりなきカルト2世問題の連鎖<短期集中連載・幸福の科学という「家庭ディストピア」1>の3ページ目を読んでもらいたい。学園を卒業した2世信者が、親や教団からHSUへの入学を進められた際の様子を証言している。本人がHSUの受験を嫌がると、HSU関係者が「入学しない理由」を尋ねる面接を行ない、強制はしないが時間をかけて緩やかに追い詰めていこうとする。
もともと教団内では、このような形でHSUへの入学を「推奨」する圧力があった。これがさらに強まることが懸念される。
特に「入学し直し」組にとっては金銭的負担が他の学生より大きくなる。
HSUは大学ではないのに私立大学並みにカネがかかる。初年度の費用は寮費・食費含めて少なくとも190万円ほど。これを支払って1年以上HSUに通い続けてきた「学生」が大学に入り直すには、またカネを払って1年生からやり直すしかない。HSUは無認可なので、HSU生は幸福の科学大学への中途転入はできない。
奨学金という名の借金をして通う学生の場合は、HSU用に借り入れた借金と大学のための借金を両方抱える「二重ローン状態」になるケースも出てくる。
この「入学し直し」組などである程度定員を補充できるのも、大学開設直後だけだ。HSU生が底をついた後は、その年以前の学園卒業生や一般信者に大学入学を推奨するしかない。こうして、巻き込まれる信者の範囲はどんどん広がっていく。
入学しない信者にもしわ寄せが行く。もともと幸福の科学は信者たちに学園や大学関連の植福(布施)と称してカネ集めを行なってきた。定員割れによって授業料収入の確保が難しくなれば、破綻するより前にまず大学に入学していない信者たちへの金銭収奪が激しさを増すことになる。
公表されている情報からはうかがい知ることができないが、大学が信者からの布施に依存する度合いが高ければ、定員と関係なく宗教法人の経営状況の変化によって大学が経営難に陥ることもありうる。
現に幸福の科学では2015年から、幸福実現党への貸付をやめ、それまで貸し付けた金を返済させるようになった。直近公表の2018年分収支報告書でも、年間収入の約65%にあたる7億7000万円を宗教法人への借入金返済にあてている。2017年には全国の教団支部の大量閉鎖が行われ、ほぼ同じ時期に職員の給与がカットされたと語る者もいる。母体である宗教法人自体、余裕があるようにも、将来的に安定しているようにも見えない。
仮に大学が定員を大きく割っても維持できるとしたら、その分、宗教法人が信者からかき集める布施への依存度が高いことになる。だとすると、それはそれで大学の安定的な運営に疑問が残る。