大学入試の未来はどうなるのか ― 第2回検討委員会を終えて―

委員から意見発表について

 これまでの経緯の説明が終わった段階で、時間は16時20分になっていましたので、定刻に終わる文科省での会議はあと40分しか残されていませんでした。ここで、委員からの意見が発表されました。座長から「それぞれ10分くらいで」と言われましたが、15分ずつの発表となりました。なお、この委員からの発表は毎回2名ずつ文科省から指名しているようで、発表した委員の中には「もう少しあとの会議で言いたかった」と言っている方もいました。  このように会議の進め方は文科省が資料を読み上げて説明したり、一方的に委員が発言して意見を述べたりするために時間が使われ、議論や質疑応答の時間が少ないのが現状です。発表要旨は次の通りです。 川嶋太津夫委員(大阪大学)(この方は座長代理です) AO入試などが広がり、学生は多様化してきている。学力の二極化が進み、大学1年生が高校4年生であるかのように補完教育が必要になっている現状もある。その中で、高校教育改革と大学教育改革とともに多面的・総合的に評価する大学入試改革を行う高大接続が必要となってきた。そのような前提のもとで、本会議の論点を以下の様に整理する。 ・本会議のアジェンダを委員で共有することが必要 ・大学入試のどう位置づけるか ・学習成果を誰が評価するか ・個別試験との役割分担 ・大学入試における公平性をどうするか 牧田和樹委員((一社)全国高等学校PTA連合会) 団体としての意見ではなく、地方の経済人としてあくまで個人の考えであることを前置きして以下のような意見を述べた。現在の高校生はみんなが行くから高校に行っているという現状があり、半数は学習指導要領をマスターしていない。日本では、多くの洋書が翻訳されていたり、高機能な翻訳機があったり、本当に英語が必要なのか疑問である。 英語4技能の評価は「読む」だけでも十分だと考える。その他の3技能も、記述式の出題も大学側が必要であると考えるならば、共通テストではなく各大学が実施すればよい。これまで通りのセンター試験を実施すべきである。みんなが一様に小中高大と進む単線型の教育ではなく、高校から選択肢を広げていく複線型の教育にしていくべきだ。  発表のあと、萩生田大臣が退席し、他の委員からは以下のような意見が述べられた。 河野(国立大学協会)委員:(岡委員の代理出席) 現在いる長崎県は離島が多く、移動も大変なので、地域格差・経済格差を考慮してほしい。 清水(筑波大学)委員: 前提が何であるか、検討すべきことはなにか射程の明確化は必要である。時系列ではないまとめ方もした方がよいのではないか? 小林委員: 現在の高校生は多様性があり、共通テストでまとめてやることに無理がある。多様性には対応できない。 末冨委員: 意思決定の権限が錯綜している。権限体系の整理が必要である。

委員の質

 最後に、私はこの検討会議で、これまでの入試改革の中心にいた2名がどのような役割を今後果たしていくのか、なぜ、この2名が今回の検討会議にも名を連ねたのかにも注目しています。その一人の荒瀬委員は今回は欠席でした。もう一人の吉田委員は出席していましたが、主観的かもしれませんが、どこか集中力がないようにも見え、会議の途中に電話でもかかってきたのか少しの間でしたが2回退室しました。国の将来を決める大切な会議ですので、この会議には最優先で臨んでほしいと感じました。  第3回の検討会議は2月13日に開催されます。 <取材・文/清史弘>
せいふみひろ●Twitter ID:@f_sei。数学教育研究所代表取締役・認定NPO法人数理の翼顧問・予備校講師・作曲家。小学校、中学校、高校、大学、塾、予備校で教壇に立った経験をもつ数学教育の研究者。著書は30冊以上に及ぶ受験参考書と数学小説「数学の幸せ物語(前編・後編)」(現代数学社) 、数学雑誌「数学の翼」(数学教育研究所) 等。 
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