萩生田大臣(左)と座長の三島氏(右)
2020年2月7日に第2回の「大学入試のあり方に関する検討会議」が開かれました。今回の議事は、以下の通りでした。
1.令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テストの報告
2.中央教育審議会(第124回)における意見の報告
3.過去の検討経緯の整理
4.委員からの意見発表
5.その他
今回は、これまで配られたものよりもかなり厚い資料が配られました。この資料は、萩生田大臣の指示で用意するように指示されたもののようで、この資料の準備のために第1回の会議から1か月空いたのかもしれません。配布資料は文科省のホームページでも公開されるでしょうが、文科省でないと集められないような貴重な資料もあります。このように、大臣が一声かければ本来有能であるはずの役人は適切に動くので、今後も大臣のリーダーシップが期待されます。
今回の中心的な議題は、「3.過去の検討経緯の整理」でしたが、特に、英語の民間試験の導入の見送りと数学、国語の記述式の見直しが中心でした。
文科省はこの件についての責任者ですが、資料を用いた説明によると導入についてはかなり苦労していたようです。ここでは、これまでの文科省の行動を許す、許さないという議論ではなく、まず客観的な事実を説明しましょう。例えば、「受験に係る地域的事情への対応」に関しては、早くから問題点を認識しており、平成26年(2014年)12月22日の中央教育審議会答申において入学希望者の受検場所を考慮することが取り上げられ、その後、平成28年(2016年)9月の検討・準備グループ第4回でも再び同様の議論がされています。その後、追加措置的に(この問題がまずいと思っているからこそ)数回対応したものの対応しきれずに延期となりました。
なぜ、そうなったかと言えば、それは文科省の民間業者に対する遠慮があったようです。すなわち、「課題解決に向けて努力はしたが、この枠組み(民間業者への委託)の中では解決できなかった」ということで、民間業者に働きかけたものの思うように動かず、結果どうにもならなくなり、民間試験は延期となったとのことです。なお、この件は、萩生田大臣の指導の下で文科省に半強制的に出させたため出てきたもので、大臣が何も言わなければ、文科省は永久に黙っていただろうというのが私の感想です。
これを含めた具体的なやりとりは次の通りです。ただし、ある程度要約してあります。
益戸委員(UiPath株式会社):
唯一の民間企業の委員として意見を述べる。課題・問題点を洗い出し、多角的な検討が必要である。これまでは結論が先に決まっており、2020年という目標に縛られ過ぎた。とりまとめではやれることとすぐできないことを見極め、将来へ課題を残すことも大切である。
末冨委員(日本大学):
リスク・技術的制約を踏まえた再検討が必要である。学習指導要領と民間試験は対応しているのか疑問が残る。民間企業への委託は妥当だったのか?2016年3月の高大接続システム改革会議の最終報告では、民間試験の利用は決定ではなかったが、その後の文科省の決定では積極的利用に変わっていた。会議がない間の判断はどうなっていたのか?
塩崎課長(文科省):
学習指導要領と民間試験の整合性については、目的や試験問題などを見て専門家が判断した。また、会議がない間も連絡協議会などが開かれて議論は進められていた。ただ、会議の詳細が必ずしも確実に引き継がれなかったかもしれない。
渡部委員(上智大学):
区別して考えた方がよいことがある。4技能の評価と民間試験はイコールではない。CEFRの対応表には目的が異なるテストが並んでいる。また、過去の成果を見る到達度テストと将来の能力を見る熟達度テストは分けて考えるべきである。それから、海外の事例を検証した痕跡がない。
塩崎課長:
海外の事例については検討した。また、4技能評価は実施手段を検討して、入試センターでも各大学での実施も難しいということになり、実績のある民間試験を利用することになった。それから、到達度テストと熟達度テストについては、新テストとして2種類のテストを検討した。(「高校生のための学びの基礎診断」のことを指していると思われる)
小林委員(日本私立大学協会):
学習指導要領との整合性の指摘は過去にもあった。結論付けが強引だったのではないか?
塩崎課長:
宿題とさせていただく。
末冨委員:
会議が中心であり、一方で、個人や団体から寄せられた意見はどのように扱われたのか?いろいろな人を招いて意見を聞くべきである。
芝井委員(日本私立大学連盟):
私大は多様な入口を持っているので、共通テストがすべての受験生を縛っていると考えないでほしい。英語は4技能でなくても、3技能でもかなり判断できる。共通テストに過大な課題を押し付けたことが原因であると考える。
文科省は、配布された資料によると少なくとも平成26年(2014年)2月19日の第12回高大接続特別部会ですでに指摘され、その後も何度となく議論が繰り返されました。
そして、最終的に昨年12月17日に萩生田大臣が記述式の見直しを発表する前日の12月16日に大学入試センターから「採点ミスをゼロにすることは極めて困難」という報告を受け、数学・国語の記述式の見直しを大臣が決断したとのことです。