コロナウイルス、「潜伏期にも感染する」は本当? 専門家の間で起きている最新の議論を紹介
さまざまな新型コロナウイルスに関する情報が飛び交う中、世界で最も権威ある医学雑誌に、興味深い2つの新しい報告が発表されました。これらの報告をもとに、そもそも新型コロナウイルスは、「本当に潜伏期にも感染するのか」「武漢の海鮮市場で始まったのか」という議論が専門家の間で起こっています。
これまで中国の研究者らは、新型コロナウイルスが潜伏期にも感染する可能性を示唆していますが、明らかな証拠はありません。そんな中、2020年1月30日付けの「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)」に、ドイツの医師らが以下のような症例を報告しました。
症例は、33歳の健康なドイツのビジネスマン。2020年1月24日にのどの痛み、悪寒、筋肉痛を伴う症状を自覚し、翌日には39.1度の発熱と咳が出ました。その後、翌日の夕方までに気分が良くなり、1月27日に仕事に戻りました。症状が現れる前、彼はミュンヘン近郊の会社で、上海在住の女性のビジネスパートナーとの会議に出席していました。
その女性の実業家は、1月19日から1月22日の間にドイツを訪問しました。滞在中、彼女は感染の症状はなく健康でしたが、中国に戻り病気を自覚し、1月26日にコロナウイルスが陽性と判明しました。1月27日に、彼女は会社に病気について知らせました。
ドイツのビジネスマンは、既往歴はなく健康で、症状が発症する14日以内に海外への渡航歴はありませんでした。鼻咽頭ぬぐい液と喀痰サンプルでコロナウイルスが陽性となりました。さらに1月28日、ドイツの会社では、3人の従業員がコロナウイルス陽性と判明しました。保健当局によれば、感染した患者は全員、監視と隔離のためにミュンヘンの感染症ユニットに入院しました。これまでのところ、4人の患者は重篤な臨床症状はありません。
ワシントンポストによると、ホワイトハウスが発表した、米国民に対する旅行制限や前例のない検疫を策定する際、この報告は重要な鍵の一つとなったそうです。
ところが、この報告に対して、2月3日のサイエンス誌は、情報が誤っていることを指摘しました。ドイツ政府の公衆衛生機関であるロバート・コック研究所(RKI)は、NEJMに手紙を書きました。実は、ドイツの医師らは、論文を発表する前に、実際に上海の女性と話をしていません。
報告の著者の1人であるミュンヘン医療センターのルートヴィヒマクシミリアン大学マイケル・ホルシャー博士は、この論文は4人の患者からの情報によるものと述べています。また、RKIとバイエルン州の健康食品安全局は、上海の患者と電話で話をしたところ、中国人の実業家がドイツにいる間に症状があったことが判明しました。彼女は疲れを感じ、筋肉痛に苦しみ、解熱剤を服用していたそうです。
ホルシャー博士は、この論文が女性の健康に関する情報ついてより明確であるべきであったことに同意します。「今日この報告を書くのなら、私は違う言い方にします」「NEJMに早く公開することで、できるだけ早く情報を共有する必要性と、大きなプレッシャーが生じた」と言います。
潜伏期にも感染する?
すでに症状が出ていた女性実業家
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