全国1位のトップ企業から税理士へ転身。キャリア開発成功の秘密とは?

 就職人気ランキングトップ企業から税理士に転身、ベンチャー企業の株式上場(IPO)を支援する、異色なキャリア開発を実現した経営者がいます。今回は、税理士であり経営者である長谷川正和氏に、本連載「分解スキル反復演習が人生を変える」でお馴染みの山口博氏が迫ります。

失敗しないようでは仕事をしていないも同じ

長谷川氏と山口氏

長谷川正和税理士事務所所長・税理士・株式会社オペレーション代表取締役の長谷川正和氏(左)とモチベーションファクター株式会社代表取締役の山口博氏(右)

山口博氏(以下、山口):「長谷川さんの経歴を知って、がぜん興味がわきました。誰もがうらやむ就職人気ランキングトップ企業だった東京海上日動で、営業や人事業務に従事した後、税理士事務所へ転じていらっしゃいます。心境の変化がおありだったのでしょうか」 長谷川正和氏(以下、長谷川):「はじめから直球で来られましたね(笑)。一言でいえば『独立起業というチャレンジへの想い』なのです。新卒で最初に配属されたのは千葉県郊外の営業支社でした。支社に所属する損害保険代理店の営業サポートと代理店を増やす新設活動が主な仕事内容です。そこで初めて『相手を通して仕事をする』ことを学んだのですが、入社1年目秋の全国キャンペーンで私が担当する企業代理店が全国1位になったのです」 山口:「デビュー戦で全国トップとは、素晴らしいですね。最大の要因は何ですか」 長谷川:「企画提案やコミュニケーションのとり方、ツール活用などそれまでのやり方にとらわれず工夫し、『まずやってみる』姿勢で臨みました。失敗もありましたが『新人が失敗しないようでは仕事をしていないも同じ』と上司から励まされました。  難しいと言われた相手にも『何でも勉強させてください』という姿勢でいかに相手の役に立てるかを考え飛び込んでいくと、胸を開き迎えてくれることも経験から学びました」 山口:「その後、営業から人事部に異動されますね。保険会社ではエースが集まる部署ですよね」 長谷川:「営業担当者として自信も自負もありましたが、異動から1週間もしないうちに高い鼻を折っていただきましてね(笑)。ひとつひとつの報告に、上司から『お前の思想哲学は何だ』と返されました。『その本質は何か』『それでお前はどうしたいのか』と問われていたのですね。  採用業務のなかでは、学生さんたちに『会社の魅力』『仕事のやりがい』などのメッセージを発信することも担当しており、『仕事を通じて自己実現するとは?』をテーマに原稿を作成していたある日、胸のなかにしまっていた『何か』のふたが開いたような気持ちになりました」 山口:「それは、何ですか」

挑戦と試行錯誤の姿勢がカギに

長谷川正和氏

長谷川正和氏

長谷川:「一言でいえば『自分の足で立つ』というチャレンジへの想いです。担当した代理店には会社を起こし社会を良くしたいと夢を語る経営者もいました。『チャレンジした結果、自分の能力や努力不足で失敗しても受け入れらけれる、だが決断できなかった自分を後悔することは受け入れられない』と時間をかけて自らに問い、30歳目前の冬に転職を決意しました」 山口:チャレンジする思いと試行錯誤の姿勢が転身のカギだったように思えます。長谷川さんは東京海上日動時代、税務や財務経理の仕事をしていたのではないようですが、そこから、税理士事務所への転身とは、大きなジャンプがあったのではないでしょうか」 長谷川:「何かの『専門性』を身につけなくてはと考えました。そして税務や会計は相手を選ばない広いマーケットをもっているだろうと。代理店を励まし、時に苦言を呈し、経営を成功に導く営業担当の仕事は、経営者を支援する税理士やIPOサポートの仕事とつながりますね」 山口:「以前、対談した山形座瀧波の南浩史CEOは、高級官僚から造船会社社長、旅館経営者というように、やはり大きな振れ幅のキャリア開発をしているのですが、そこには国や顧客に貢献するという共通のミッションがあったわけです。キャリア開発に制約はありませんね。  しかし、営業、人事から税務の世界への転身ですから、ご苦労もおありだったのではないでしょうか』 長谷川:「家庭をもち実務をしながら資格取得に10年、決して楽ではありませんでしたが、それも『想定の範囲』であったと言えるでしょう。実務の習得資格取得、そして起業へと、あきらめることなく続けることが出来たから今があるのだと思います」 山口:「そのような苦労を、本日もですが、普段から、決して表に見せませんよね。何か気持ちのコントロール、言動のコントロールをするスキルを駆使されているのですか」
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顧客を巻き込む対人スキルの源とは
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