わずか2年で黒字転換・ボーナス支給。官僚出身の「よそ者」が老舗旅館を再生できたワケ

 官僚から造船会社社長へ転身、そして、老舗旅館の再生を成功させた経営者がいます。再生のカギは何か? 今回は山形県南陽市の山形座 瀧波CEOの南浩史氏に、本連載「分解スキル反復演習が人生を変える」でお馴染みの山口博氏が迫ります。

造船業の前夜祭が旅館営業のヒントに

南氏と山口氏

山形座瀧波CEO・南 浩史氏(右)とモチベーションファクター株式会社代表取締役社長・山口 博氏

山口博氏(以下、山口):「老舗旅館のCEOである南さんは、官僚出身という異色の経歴をお持ちです。どのようにキャリアを作られてきたか、まずお伺いできますか」 南浩史氏(以下、南):「国家公務員は、公に役に立つことを常に意識しているものです。私もそのひとりで、公に貢献する志を持ち続けていました。その後、造船会社の娘さんとの縁に恵まれて養子に入り、造船会社で20年、そのうち社長を6年務めたわけです。生まれ育った瀧波の経営が難しくなったことがきっかけで、瀧波の再生に携わることになりました」 山口:「国家公務員から造船会社社長、老舗旅館の再生と、全く異なる分野で活躍されているように思えるのですが、南さんにとって、キャリア形成のプリンシパルは何なのでしょうか」 南:「確かに、業界も異なりますし、全く異なる領域のように見えると思います。しかし、私にとっては、実は、とても密接な関連があるのです。旅館で生まれ育った私は、食住近接の環境の中で、日々、父母がお客様に奉仕する様を見てきました。そのことと国家公務員として公に貢献することは根が同じなのです」 山口:「なるほど、顧客か国民かの違いはあっても、貢献するという基本的な共通な考え方があるのですね。しかし、造船業と旅館業はさすがに大きな隔たりがあるように思えますが」 南:「そう思えるでしょう。船は一隻数十億円単位のビジネスです。一方、旅館業はお一人さま数万円単位ですから、規模も違えば、企業を相手にするか、個人を相手にするかも異なります。船をお客さま企業へ納める際には、船の無事を祈って、多くの関係者に集まっていただき、それは盛大な前夜祭を行います。私は500隻余の船の前夜祭に携わってきました。  そして、その前夜祭は、旅館でお客さまをもてなす思いと全く同じだと思うのです。いまは旅館の社長として、朝食や夕食のおもてなしをしています。そば打ちもします。造船における前夜祭は年に40回でしたが、今現在、旅館において、毎日が前夜祭なのです」

「藩は藩主のものでなく、民のもの」

山口:「そもそも国家公務員を目指して公に貢献することを志したのは、いつ頃からなのですか」 南:「上杉鷹山公候の伝国の辞に『藩は藩主のものでなく、民のものである』というものがあります。藩校である米沢興譲館高校で学び、応援団の活動に明け暮れていたのも、その教えを自分なりに体現したかったからです。国家公務員としての取り組みも、造船業における前夜祭も、旅館業も、その教えに導かれているように思います」 山口:「私の出身地である長野県上田市では、大正時代、民衆の自由な教育を求め、お互いに学び合う、上田自由大学運動が起きました。私が現在、全国の企業・団体で実施している分解スキル反復演習型能力開発プログラムは、お互いにスキルを高め合う構造になっており、その教えに影響を受けています。同じように、DNAは受け継がれるように思います」
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