「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」は善意の悪法

ネットやゲームの効用を全く無視する素案には悪意しか感じられない

 条例の素案を見ると、子どもがインターネットやゲームに長時間触れることがまるで堕落の始まりのような表現がありますが、言うまでもなく、インターネットは世界の情報を低コストで収拾できる情報ツールですし、一口に「ゲーム」といっても、シューティング、パズル、ロールプレイングなど、様々なジャンルがあります。中でも脳トレのように、クイズ・パズル・謎解きは素早いフィードバックがあり、学校の勉強に役立つものも多数あります。  生き甲斐ともいえるくらいゲームが好きな子どもが、親にそのゲーム機を取り上げられたらどうなるでしょうか。親が杓子定規に「条例で中学生は1日60分までと決まっているから」と、言ったとしても、娯楽を奪われた子どもが勉強やスポーツに意識が向くものでしょうか。私は疑問です。普通に考えれば、親に隠れて新たに買うか、友達からゲーム機を借りるか、場合によっては盗むといったケースもあります。  大好きなゲームを取り上げられた子どもが強制的に「勉強せよ」と命じられたら、ストレスの捌け口として、暴力的になったり、弱い者いじめを行ったりということも考えられます。  かつて教育委員会から自身のマンガを批判された手塚治虫は、「マンガは頭のおやつだ」と述べましたが、夢中になるくらい好きなものをみつけた子どもに娯楽を与える必要性を軽視してはいけません。

行政が子どもの趣味や嗜好を制限することが大問題

 例えば学校でスマートフォンを、ゲームやSNSに使用することについては、やはり授業に支障をきたすことから、学校が一定の規則を設けて禁止することは合理的です。また、親子で学習と娯楽のバランスについてのルールや、課金の上限を決めることも大切です。  これを県が条例として義務づけるということは、「子どもの健全な育成」という大義名分のもと、あらゆる行為を規制する法令を策定できることになってしまいます。今回の条例素案で問題となっている「ネット」や「ゲーム」を、「野球」とか「ラグビー」とか「水泳」に置き換えたらどうなるか。ネットやゲームが依存症などのこころの病なら、スポーツは全般的に物理的な傷害や死亡事故なども発生するリスクがあるのですから、健全な育成の名の下に制限をしなければなりません。
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行政はどうすべきなのか?
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