労働運動の衰退した社会と自己責任論。関西生コン弾圧をめぐって<佐高信×木村真>

一般の人も運動に反発する

木村:僕は市議会議員になる前から、誰でも一人でも入れる労働組合をやっていて、今でも自分の担当を持っているんです。それで団体交渉や抗議行動をやったりしているんですけれども、とある会社の前で抗議していたら、争議に関係ない通行人から「あんたらこんなんやって許可取ってんの?」と言われるんですね。「許可なんかいらんねん」と返しました。  要するに街頭宣伝やってるだけで、経営側じゃない普通の通りがかりの人から文句を言われる。冗談を言うなと(笑)  またデモ行進で赤信号を渡ったりするわけですが、運転手がラクションをブーブー鳴らしてきたり、怒鳴ってきたりする。もうなんなんかなと思います。  その人に話を聞いたわけじゃないから分からないけれど、雰囲気としてはね、「ワシらしんどいこととか理不尽なこととかあっても我慢して、黙って働いとんねん。せやのにお前らは権利ばっかり主張しやがって」みたいな感じなんじゃないでしょうか。  みんな本当に抑圧されているんだけど、今の会社を辞めても他に働くところがないみたいな感じでとにかく我慢して働いている。そうすると正当な権利を主張する人に対してね「なんやあいつらは!」みたいな気持を抱いてしまう。歪ですわ。

自己責任論の蔓延

佐高:一般の人たちも、追い詰められてるわけだよね。余裕がなくなっていて、組合とか、そういうもので助けられるって経験がなくて、「裸」で生活に追われてるわけでしょ。そうすると、もうどっかに当たり散らすみたいな話になってきちゃうわけよね。 対談 「自己責任」という考え方の影響も大きいと思う。一人で放り出されて、一人で責任取れっていうことになっちゃってる。  活動家で作家の雨宮処凛と話しててなるほどなと思ったのは、彼女は中学・高校時代はリストカットしてたと。つまり自分が今上手くいかないのは全部自分のせいだと思っていた。それで東京に出てきて、最初は右翼のバンドに入るわけでしょ。それで日本が悪いのは全部アメリカのせいだ、左翼のせいだ、みたいな話になって。で、そこで逆に社会を発見したんだと言っていた。あ、私だけの責任じゃないんだ、っていう。そこで自己責任から解放されたんだっていうんですよ。社会にも責任がある、っていうことを発見したんだね。で、社会を発見していない、あるいは社会を見ようとしない奴らが自己責任にこだわって、そいつらが今権力の座にいるから、すごく生きづらい社会になってるんですよね。 ※近日公開予定の続編では、日本で進行する「警察国家化」について取り上げます。 <収録・構成/HBO編集部>
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