障がい者そのものを取り巻く雇用環境の変化も、障がい者福祉事業の倒産増加の背景にある。
障害者雇用促進法で定められた法定の雇用率(従業員に占める障がい者の割合)は、上昇傾向にある。2018年の改正で2.2%まで引き上げられたが、2021年4月までにさらに0.1%引き上げられる予定だ。
その結果、2001年には約25万人だった障がい者の雇用者数は、2019年には約56万人にまで増加。約20年の間に障がい者の雇用は倍以上に増えている。
数値を見てもわかるように、現在ほど障がい者の雇用がフォーカスされた時代はないと言えるだろう。障がい者の雇用が増えるということは、その分だけ関わる人や企業が増えることになる。そして、その結果として就労支援事業の倒産も生じやすくなっている。
就労支援事業は、障がい者の労働力に期待が集まるのと比例するように事業としての注目も高まっている分野となる。就労支援事業はいくつかに分類できるが、ここでは就労継続支援A型事業について詳しく見ていきたい。
就労継続支援A型事業は、現状においては一般企業で働くことが難しい障がい者が雇用契約を結び、一定の支援を受けた上で働く福祉サービスだ。A型事業所は2010年には全国で646件だったが2014年には2431件にまで増加している。
A型事業所増加の背景には営利法人の参入の増加がある。2010年は社会福祉法人による運営が約半数を占めたが、2014年には約2割にまで減少。一方の営利法人は2010年は約2割だが2014年は48.2%と約半数を占めている。社会福祉法人と営利法人が入れ替わる形となっており、その分だけ営利企業の数が増えたことになる。
数で見ると2010年には144件しかなかった営利企業が2014年には1172件と10倍以上となっている。社会福祉法人も2010年は298件で2014年は496件と増えているが、営利法人は社会福祉法人を大きく上回るペースで参入数が増えている。
当然であるが、参入する企業が増えればその分だけ倒産する可能性のある企業も増える。もちろん倒産しないに越したことはないのだが、現状の法体制では以前のような0件に戻るのはあまり現実的ではないだろう。
倒産数の増加には、こういった法改正と社会の変化がある。いずれにしても、障がい者支援と障がい者雇用は共に重要性が高まってきている分野である。試行錯誤を繰り返しながら、誰にとっても安心して暮らし働ける社会の方向へと少しずつで進んでいってほしいと願うばかりだ。
<文/菅谷圭祐>