中国人実習生は賄賂の要求を拒否し、成績表をゴミ箱に捨てた<アレックの朝鮮回顧録5>

帰国日の前倒しを要求した、ロシアからの語学留学生

 一年間滞在する実習生を除くと、夏休みに1、2ヶ月ほど金日成総合大学に語学短期留学する団体もいた。フランスとドイツから少し来ていたが、もちろん中国からがもっと多かった。  私がいたときはロシアの3つの大学校――国立モスクワ国際関係大学校、高等経済大学校、ロシア外務省の外交学学院(国立モスクワ外国語大学校の学生もいたが、彼らは平壌外国語大学におり、我々と同じ寄宿舎に住んだ)の学生たちも夏に短期の朝鮮語留学をしていた。  これもほとんどが朝鮮語専攻だったが、私は彼らと絡みまくった。一緒にウォッカを飲み、インディー・ロック、そしてアメリカのシットコム「シリコンベリー」について遅くまで議論したりした。平壌にはナイトクラブがないためつまらないと不平を言う彼らの中には、韓国に行くため韓国語を学んだ人が多いようだったが(彼らは平壌の後、韓国で1年間留学する)、北朝鮮に関心がある人もいた。私は北朝鮮の歴史をよく知っている、モスクワの大学に留学中のウズベキスタン出身高麗人学生と興味深い話をたくさんした。  もちろん、彼らのほとんどは金日成総合大学での留学をそれほど楽しんでいないようだった。彼らはそればかりか、平壌のロシア大使に平壌を発つ日を前倒しするよう直接要求していた。

軍事施設の裏山でピクニックをし、秘密警察に捕まる

 要求は拒絶され、彼らは仕方なく退屈な生活を耐えなければならなかった。その後、ロシア人学生たちは暇つぶしのため寄宿舎の裏山にピクニックをしに行った。  しかし彼らはその山に砲撃施設があり、国家安全保安省の本部を見下ろせることを知らなかった。彼らはすぐに捕まり、「KGBの臭いを醸し出す」人々によってスパイとして一日中、屈辱的な尋問を受けた。解放された後、彼らは同宿生の同伴なしには外出できなくなり、私に「我々は祖父母が体験したナンセンスをよくわかった」と断言した。  だがこの話は、その後彼らが北朝鮮を離れ、現在ソウルで幸せな留学生活を送っているためハッピーエンドである。  一方、私は平壌での生活を楽しみ、あの都市を深く愛するようになった。ほとんどの留学生たちは怖がったり、退屈がったり、または興味がないといって寄宿舎に引きこもっていた。しかし私は数名の友人と一緒に、一週間に何回も平壌を探訪した。ゆえに、スパイであると誤解されやすくなったのだ。それについては、後に語っていこうと思う。 <文/アレック・シグリー>
Alek Sigley。オーストラリア国立大学アジア太平洋学科卒業。2012年に初めて北朝鮮を訪問。2016年にソウルに語学留学後、2018~2019年に金日成総合大学・文学大学博士院留学生として北朝鮮の現代文学を研究。2019年6月25日、北朝鮮当局に拘束され、同7月4日に国外追放される。『僕のヒーローアカデミア』など日本のアニメを好む。Twitter:@AlekSigley
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