ツイッターにおいて、女性がヒールやパンプスの着用を強制されることに反対する社会運動「
#KuToo」を提唱する石川優実さん。
石川さんは昨年10月、イギリスの
BBCから「2019年100人の女性」(BBC 100 Women 2019)に選ばれた。また「#KuToo」は12月2日に「2019ユーキャン新語・流行語大賞」のトップテンに選ばれている。女性だけが歩きにくく、怪我の危険もある靴を強制されている現状を変えたいという声は着実に認知されてきている。
#KuTooの発端になったツイートが投稿された昨年1月24日から早一年。石川さんにインタビューを実施し、今改めてなぜ「#KuToo」にたどり着いたのか、そして「#KuToo」とは何か、彼女の考えるフェミニズムとは何かについて話を聞いた。
取材当日は、筆者の前に米ワシントン・ポストからの取材が入っており、海外メディアからの注目度の高さが伺える。
「『#KuToo』を始めてから今日まで、取材の半分くらいは海外メディアです。BBCの『100人の女性』は、#KuTooを女性差別の問題として取り上げ、運動してきたことによって選ばれたと思います。
海外メディアでは、アメリカだとニューヨーク・タイムズ、タイム、ブルームバーグ、イギリスではガーディアン、さらにはブラジルのメディアからも取材が来ました。注目の仕方も日本とは違っています。海外の方がジェンダーの問題として捉える視点を持っています。そして、女性差別と戦う人たちを尊重しているというか、『わ、かっこいい』というノリがありますね。
一方、日本では、新聞やウェブメディアなら、ジェンダーの問題として見る視点があるのですが、テレビだと労働の問題か健康の問題、ドレスコードの問題というように問題を仕分けしてしまうところがあります。
実際には、労働の問題やジェンダーの問題が組み合わさっているのに、ジェンダーの問題には触れたくないのでしょうか」
運動の発端になったツイートから1年。#KuTooの運動にどのような手応えを感じているのだろうか。
「自分では盛り上がっているように感じますが、これがどこまで世間に浸透しているのかは、正直なところあまり判断できていません。見てない人は見ていないのかな、とも。
ただ、#KuTooの動きが出てきてから、たとえば職場で上司に『ヒールのある靴を履きたくないという交渉ができました』とか、会社から『履かなくてもいい』と言ってもらえたという話も聞きましたので、少しずつは意識してもらえていっているのかなと思います。
学生だと、就職活動の際にパンプスの着用の問題がありますので、今のうちに履かなくてもいいようになってほしいということで協力してくれる方が多いですね。上の世代の女性ですと、自分たちが靴で苦労したことを、下の世代にも続けさせたくないから、ということで協力してくれる方もいます」
社会的なムーブメントとしてどれだけ盛り上がっているのか、今でも判断が難しいという石川さん。そうした中で、#KuTooが昨年の「新語・流行語大賞」のベスト10に選ばれたことは、「#KuTooがSNSのワクを超える」のに有用なのではないか、と考えている。
「最初ベスト30に入った時には、ノミネートされて嬉しいな、多少は知られてはいるのかな、と。去年はそこに#MeTooが入っていたので、もしかしたら#KuTooもあり得るかなとも感じましたね。
そして、ベスト10に選ばれた時には、むしろ「あ、そう?」と言うくらいの感じでした(笑)#MeTooの時も思ったんですが、そんなに社会のみんなは知らないんじゃないだろうか、と。そういう疑問を持ちつつ、でも#KuTooがベスト10に。本当にありがたいですね。これでツイッターで盛り上がっている運動、というワクを超えられるんではないかと感じましたから。
#KuTooはSNSで始まった運動ということもあって、ネットをしない人には伝わってないのでは、という疑問があるんですが、『新語・流行語大賞』に選ばれたことで、それを超えられるんじゃないでしょうか」