奇妙できな臭い関西生コンへの弾圧事件。労働問題なのにマル暴が前面に出ることの意味とは

全湾港も狙われる危険が

 他にもマル暴が動いて弾圧されかねない組合はあるのだろうか。 「関西生コン型の事件化を警戒しているのは例えば、全港湾(全日本港湾労働組合)などがあります。日本全国の港湾産業、またその関連事業の労働者約1万名で組織される労組なのですが、全国単一組織という形をとっています」  単一組織である全港湾は上部団体の全国港湾とともに昨年4月にも48時間のストライキを行うなどしているが、これに対して業者側がどう言っているのかが重要であるという。 「産別最賃協定(産業で統一された最低賃金をめぐる労使の協定)を港湾業界側は『独占禁止法違反』と言ってきています。中央労働委員会は独禁法違反に当たらないと言っているのですが、この主張には、関西生コンに対して「強要未遂」「恐喝未遂」と言ったものとかぶるものを感じます。要するに、正当な労働運動上の行為を刑事罰の対象であるかのように主張してくるのです」  労働組合の活動は、労働組合法1条2項に「正当な組合活動は刑事罰の対象にしない」とある通り、ストライキや抗議行動などは刑事罰の対象にならないのだが、経営者側や警察は、それが例えば強要未遂であったり、また独占禁止法違反に当たるなどとして、刑事免責されない行為かのように扱っている。  この間の捜査の動きなどを見ると、おそらく企業別組合ではなく、中立系、企業の枠を超えて個人加盟できる一業種を統一して動く労働組合の活動に対してマル暴なども含め、警察が介入し事件化したいという思惑があるのではないかと推察される。

「反社」というレッテル貼り

 またマル暴が捜査の全面に出ていることは、労働組合を「反社(反社会的集団)」として扱おうとしていることの表れなのかもしれない。鈴木氏は語る。 「積極的に活動する労働組合を『反社』と規定する。関西生コンの武建一委員長が、昨年9月に『1億5千万円を脅し取った』として恐喝容疑で逮捕されていますが、これは2013年の出来事ですし、企業閉鎖に対して闘って工場を占拠し、雇用の確保と10年越しの不当労働行為を追及した正当な活動で、5年後に逮捕されたのです。これでは恣意的に逮捕されてしまう。こういった捜査も、『反社』であれば仕方ないのだ、ということでしょう」  反社という概念が恣意的に、いわばレッテルとして使われる事例もある。今回の一連の事件の前に、いわゆるレイシストと呼ばれるような潮流が先行して、関西生コンを「反社」と捉え、情宣や事務所への押しかけを行なっていたのである。 「レイシストたちは関西生コンを『反社』として批判しています。私も所属する東京管理職ユニオンでは、青林堂のパワハラ事件に関する労働争議(昨年7月19日に東京地裁で和解が成立、同社社長ら役員がパワハラ行為を認め謝罪、管理職ユニオンに対しても謝罪の上解決金を支払い、また同月23日には自社発行書籍での誹謗中傷も東京都労働委員会より出版自体を不当労働行為とする命令が出ている)も行なっていますが、それに対してレイシストが私たちの労組事務所前で抗議の街宣を行なっています。  関西生コンの例を見ると、レイシストたちが登場し、労働組合に対抗してきて、その後に警察が登場したということもあり、労働運動に敵対するために最初にレイシストが登場、しかるのちに警察が登場するという形があるのではないか、と推察されます」  レイシストにマル暴ら警察。さらには労働組合の活動を「恐喝未遂」「強要未遂」として報道する一部メディアの存在もあると鈴木氏は指摘する。いわば、レイシスト=警察=メディアの三位一体で、労働組合を攻撃する構図があるということだろうか。  すでに述べたように、関西生コンの一連の事件では労働委員会での組合側の勝利命令も出てきており、また事態を危惧する労働法学会有志声明なども出ている。共謀罪の先取り型の捜査という指摘もある。事態の進行は今後も要注目だ。 <取材・文/福田慶太>
フリーの編集・ライター。編集した書籍に『夢みる名古屋』(現代書館)、『乙女たちが愛した抒情画家 蕗谷虹児』(新評論)、『α崩壊 現代アートはいかに原爆の記憶を表現しうるか』(現代書館)、『原子力都市』(以文社)などがある。
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