年末のイベントでは、フェミニズムの思想をもとにファッションやデザイン、ZINE(少量生産の冊子)を制作するアーティストに話を伺うことができた。
「そもそもフェミニズムとは、すごく端的に言うと全ての性は平等であり、性差別がない社会を求めること。運動の歴史は長く、また一枚岩ではないため一言では語り尽くせないが、そもそもある性の多様性を紐解き、今あるような男性そして異性愛に権力が寄ったシステムを変えていくムーブメントと捉えている。男尊女卑という男性優位な社会が未だに残る中、フェミニズムを支持する人が声をあげることで、一過性のものではなく、常に世の中へ問題提起していくことが大事だと思う」
また、DJを担当した女性は、「私はLGBTQのどれにも属さないが、フェミニズムは支持している。美容室に行った時のアンケートに、男性は会社員という記載があったのに対し、女性は主婦や有職主婦という書き方がされていたのに疑問を感じた。どうして、女性は主婦になっても仕事をすることが、カテゴリー分けされるのかが理解に及ばなかった」と、実体験を語った。
イベント参加者の多くは、LGBTQに当てはまる人たちであった。どのような心境でパーティーに参加したか尋ねると、ゲイの男性は「初めて参加したが、居心地の良い雰囲気で楽しい。これが新宿2丁目だと、変にレズビアンやゲイなどカテゴリーに分けられてしまうので、多様性を認めるイベントがもっとあるといい」と話す。
また20代のレズビアンの女性は「ネットで検索してこのパーティーに辿りついた。普通のイベントと違って、自分を解放できる場所だと感じた。皆思い思いにおしゃべりしたり、踊ったりしていて楽しそう。私はレズビアンだけど、学校ではそのことを言い出せなかった。こういう居場所に来ると安心する」と、イベントの居心地の良さについて語った。
ローレン氏は、WAIFUのイベント作りで心がけていることについて次のように話した。
「LGBTQと聞けば、新宿二丁目を思い浮かべると思う。しかし、新宿二丁目の雰囲気に違和感を覚えている人、また、Xジェンダーやノンバイナリー(性自認が女性でも男性でもない人)などは、行き場を失っている現状がある。さらに、今年4月に起きたトランスジェンダー女性の入場拒否の問題は、新宿2丁目のカルチャーには根深い複雑な状況があることを知るきっかけになったのでは。WAIFUは、そうした居場所を探している人でも来やすいようなイベントにし、誰でも寄り添えるような雰囲気作りを心がけている」
新宿2丁目のゲイバーに端を発したLGBTQタウンの歴史は、およそ60年近くにもなる。
長らくゲイバーやレズビアン、バイセクシャルなど、それぞれのコミュニティが形成されていった結果、古いしきたりや慣習が残っているお店に行きづらさを感じる人がいたり、トランスジェンダーやノンバイナリー、Aセクシュアル、クエスチョニング(性的指向が定まっていない、あるいは意図的に定めていない人)など、LGBT内でのさらなるマイノリティの行き場所が見つからなかったりといったことも起きているのだ。
「新宿2丁目のカルチャーの中で、トランスジェンダー男性よりも、トランスジェンダー女性の方がコミュニティに入っていけず、苦労しているイメージがある。LGBTQの中でも男尊女卑のような風潮があり、もっと寛容的で多様性に富んだ形で、受け入れることが大切だと思う」(ゲイ男性)と参加者からの声もあった。
音楽に酔いしれ、お酒を楽しみながら踊る。そんな華やかなイベントの裏では、ジェンダーやセクシュアリティに関する様々な問題が渦巻いている。今回の取材でそうした現状を突きつけられるとともに、改めてクラブイベントの運営について考えさせられた。
<取材・文/古田島大介>
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている。