ここまで重大インシデント1件をとりだして概説しましたが、それによりインシデントの評価と分析、それによるフィードバックがいかに重要かはよくおわかりいただけたと思います。
今回の重大インシデントでも、
平素「科学リテラシー」やら「ニセ科学批判」やらでご活躍の方々が、「非常用DG(ディーゼル発電機)があるから騒ぐな」「非常用DG動いたからダイジョウブ」「騒ぐ奴は情弱」「伊方は安全です」などと大言壮語をなさっていましたが、これらは原子力安全の論理からは完全に誤っています。
非常用DGは、
多重防護の第2層から第3層に相当するもので、同じく第1層から第2層に該当する外部電源の受電継続の後段に相当します。多重防護は前段否定の原則がありかつ、原則として相互独立でなければなりません。
表1 多重防護の概要
IAEA基準の動向 − 多重防護(5層)の考え方等
平成23年3月2日 (独)原子力安全基盤機構 原子力システム安全部 次長 山下 正弘 より引用
簡単に言えば、
受電が多重化されているからDGはスペックを下げても大丈夫とか、10秒で起動する非常用DGがあるので外部電源喪失しても大丈夫という考えや発言は、多重防護の原則に著しく反してしており、完全に間違えています。
福島核災害当時にはそのような
完全な誤った考えで大暴れする連中が、3月11日の段階で「福島第一はもう安全です」「核物理学を知らない奴は黙っていろ」(原子力発電所の過酷事故は熱力学が主役であって核物理学は端役)「騒ぐ奴は情弱」「馬鹿は黙ってろ」などと暴言と共に徒党を組んで暴れに暴れ回りました。筆者はこういう連中を
ヒノマルゲンパツ酷死(国士のもじり)と徹底糾弾してきました。
今回もそのような愚行を行う連中が跋扈したことに激しい嫌悪感を覚えます。それらの中には、今回も
エエ歳こいた学位持ちも見受けられ、その
学習能力の無さにと激しい自己顕示欲には驚愕します。少なくとも自分の専門外を論じるときには、きちんと事実を抑え、特に原子力については、原子力安全の考え方について基本中の基本を抑えてほしいものです。「無知の知」は知の根幹です。
短期間で複数の重大・重要インシデントを起こした四国電力は、その重大インシデントから学習し、それにより新たな決断を行い、伊方発電所をより安全に改修することができますし、それに強く期待します。四国電力が第15回定検を一時中止した*ことは大英断と言えます。
〈*
伊方原発で停電トラブル 定期検査を中断―四国電力2020/01/26時事通信〉
ここまで述べてきたように、
インシデントとアクシデントの切り分けとインシデントの階級付け、分類、分析、フィードバックは安全の基本中の基本です。既述のように原子力船「むつ」中性子束漏洩重大インシデントを矮小化するという愚行のために原子力・核施設でのインシデントとアクシデントは、工学的に全く意味を持たない「トラブル」という無意味な言葉にまとめられてきました。
これによる弊害は、一般市民だけでなく、政治家、学者、役人、メディア人士にも蔓延し、電力・原子力屋までが冒されています。筆者はこれを「
ヒノマルゲンパツPA自家中毒」と酷評してきています。このような日本特有の極めて有害な悪弊からは、直ちに脱却せねばならないと考えます。
今回はここまで、全体の概説を行いました。
◆伊方発電所3号炉第15回定検における重大インシデント多発(1)
<文・写真/牧田寛>