迫害から逃げて日本に来たクルド人家族がビザを求めて提訴。子供たちの権利と未来を賭けた戦い

トルコに、私たちの生きる場所はない

ムスタファさん

長男のムスタファさん。「トルコへの未練はなく、日本で生きていきたい」と語る

 父メメットさんはトルコのアディアマンという土地の出身。幼いころからクルド人であることで差別を目の当たりにしてきた。子供のころ、トルコ兵に銃で頭を殴られることも経験している。  大人になり、親戚が政府に対抗するゲリラ組織に入ってしまったばかりに、その疑いはメメットさんにも向けられるようになる。警察に連行されては厳しい取り締まりを受け、時には電気ショックを浴びせられるという暴力も経験もしている。 「もうトルコでは暮らしていけない」と考えたメメットさんは、弟のいる日本へ行く決意をする。一方、今度は残された妻のゼイネプさんが呼び出され「夫はどこに行ったのか?」と尋問されるようになる。  暴力まで受けたわけではなかったが、尋問に嫌気がさしたゼイネプさんもまた夫のいる日本へ子供を連れて来日する決意をする。ゼイネプさんはのちに、入管のインタビューで「トルコに、私たちの生きる場所はない」と答えている。  ムスタファさんたちをはじめ、今回の裁判はたくさんの子供たちの人生がかかっている。ビザのない現状では保険証も住民票も持てず、働くこともできない。将来、なりたい職業を目指すこともできない。  このまま大人になれば、子供たちが入管に収容されてしまう可能性も大いにありうる。なぜ罪のない子供たちが裁判をしてまで自分たちの権利を勝ち取らねばならないのだろうか。  この5組の裁判は、子供たちの未来をかけた裁判なのである。 <文・写真/織田朝日>
おだあさひ●Twitter ID:@freeasahi。外国人支援団体「編む夢企画」主宰。著書に『となりの難民――日本が認めない99%の人たちのSOS』(旬報社)など。入管収容所の実態をマンガで描いた『ある日の入管』(扶桑社)を2月28日に上梓。
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