ハチミツは、傷に効くし、喉の痛み、咳にも効果抜群。(写真のハチミツは自家採取)
5年ほど前だろうか。機械のスクリューに挟まれて右手中指の先2㎝がちぎれた。爪の根っこあたりから先だ。流れ出てくる血をみて、近くにいた仲間に「やっちゃった、やっちゃった、指がちぎれた。俺、気絶するから。あとはよろしく!」と言ってひざまづき、そのまま記憶を失った。気づいたときには、仲間が指を止血して救急車を呼んでくれていた。
病院では、適正に処置してくれた。帰りに渡されたのは痛み止めの薬だった。3日間、特にその晩はじんじんと痛かったが、薬は飲まなかった。痛みを感じることで免疫力と回復力が高まると考えたのだ。
数日後の診療時、医師が荒く包帯を外すので「痛い」と言ったら、中指と薬指の根元に麻酔を打たれて痛みは消えた。そのかわりに、健全だった薬指の関節が麻痺して動かなくなってしまった(のちに自らのリハビリで回復)。
その日、ちぎれた中指の傷口断面に塗るようにと渡されたのは軟膏だった。主成分を見ると「精製白糖とポビドンヨード」とあった。ポビドンヨードとはヨードチンキの刺激を薄めたもので、抗菌成分だという。
これについていろいろと調べると、ハチミツを真似て作ったものだとわかった。ハチミツはブドウ糖や果糖やタンパク質やカルシウムを含み、殺菌力が高い。「ハチミツは傷口を塞ぐ効果が高い」と近代医学の父・ヒポクラテスも残しているし、各国の現代医療でも報告されている。
俺はその時期、ベランダでニホンミツバチを飼い、ハチミツを採っていた。天然で無添加のハチミツがあるのだ。処方された軟膏は使わずに、そのハチミツを中指に毎日塗った。そして、断食も実行した。ヒポクラテス曰く「病人に食べさせると病気を養う。食事を与えなければ病気は早く治る」。怪我も同じだ。
驚くのはそこからだ。傷がみるみる塞がり、指がぐんぐん伸びていった。1週間で失った指の半分が再生した。さらには、なくなった爪も生えてきたのだ! 元どおりの長さまでは伸びなかったが、驚くべき回復。医師も驚いたが、ハチミツと断食で治したと言うと苦笑していた。
ホーリーバジルを乾燥させたもの。お茶にして飲む。インフルエンザや風邪の予防、頭痛や呼吸器疾患の改善につながる
こうして、虫歯や風邪や発熱も、食事療法や食べ方(断食、よく噛む、間食しない、腹を空かしてから食べる、など)で治してきた。歳を重ねて出てくる症状も、原因を見つめ、生活習慣を改めるとともに、ちょっとした姿勢の改善や呼吸法、身に着ける下着や服を変えたり工夫したりで徐々に治してきた。
結果、歳を重ねながらその都度その都度、支障が出てくる肉体の変化を、原因追究とその改善と対処で乗り越えているわけだ。加齢や環境とともに体は変わり続けていく。歳を重ねる楽しさは、その駆け引きにあると言ってもいい。知恵と対応力を重ねることが、自分と向き合い、自分をいたわり、自分を愛し、結果として人を思いやれるようになるのだと思う。
「常に今が一番健康だ」と感じながら、この年齢まで歩んでこれた。「人の体ってすごい」ということとか、体の衰えと向き合う知恵とか、その都度、気づきや学びがあった。歳を重ねるのも悪くないと思えるようになった。病気や怪我や衰えは、心身からのメッセージなのだ。
そうしたメッセージを受け止めて心身を見つめるとか、対処するための情報収拾とか、改善への試みや試行錯誤とか、時間があれば誰でもできる。しかし、働きすぎの現代人はその時間と余裕を取れないから薬や病院に頼るしかない。
自分の肉体なのに、他力依存になる。対処療法である現代医療では、治療はその場しのぎのものになりかねない。原因が改善されなければ、同じ病や怪我を繰り返し、それが積み重なればいつか取り戻せないことにもなりかねない。