雇用、医療、保険……。報じられない法案改正の中身。法律を破る議員が税金の使途を決めている現実

知っておくべき医療・年金・介護の変化

 さらに、医療・年金・介護に関すること。つまり、社会保険に関することが変わるという。今明らかになっている内容で話題になっているものには次のようなものがある。 ・パートの厚生年金の適用拡大 ・高齢者の年金受給を柔軟にする年金に関するもの ・75歳以上の高齢者の医療費の窓口負担を一部の水準以上の収入がある人には現行の1割から2割の負担を担ってもらう  厚生年金の適用拡大は歓迎すべき一面があるのも事実だが、保険料の負担は企業側が50%出すことになり、中小企業を中心にその負担増に頭を悩ませる経営者は少なくない。高齢者の年金受給に関するものも含め、公的年金制度は、社会保険制度ではあるかもしれないが、その実態は多くの国税を投入していて社会福祉政策の側面が強いのが公的年金の実態だ。それならば、現行制度の大枠は維持し、負担を一律に投網をかけるのではなく、負担能力のある人を中心にメリハリのある負担を求めるのが筋だと思う。いづれにせよ、国民が求める抜本的な年金制度改革からはほど遠い。  年金だけでなく、医療保険制度の負担も増えていくのでは、健康保険制度も当てにはできないなと思う人も多くなっていくだろう。それなら自分で医療費に関しても準備を手厚くしたいと思う人がいるのが当たり前だ。こうした背景のもと、将来のいざという時に備えるための生命保険は、この30年近く続く超低金利もあって、いわゆる貯蓄型の生命保険は主役の座を降りた。多くの生命保険会社では募集も消極的になった。その一方で入院した時にもらえる入院給付金や、特定の病気や手術に対して保険金が払われる医療に関する保険や、掛け捨て型の医療保険が中心となった。

重くのしかかる「保険料」

 毎月の給金から税金や高額の社会保険料を天引きで支払った後の手取りから、さらに民間の医療保険や掛け捨ての死亡保険に保険料を払っている。その保険料は毎年数万円にもなる。生命保険文化センターの調査委によると、平成30年度の1世帯あたりが1年間に払い込む生命保険の掛け金は、38万2千円。これには、個人年金保険や中小企業などの経営者で高額の保険料を払っている人もいるので、普通の世帯はこれほど払っているとは一概には言えないのだが、生命保険料が高額なのは間違いないだろう。例えば、45歳で1万円の入院給付金が120日間支払われるような終身型の医療保険に加入し65歳まで21年間払うとなると、毎月の支払いは夫婦で16000円を超える。年間で19万2000円。支払い総額は403万円にもなるからだ。どれほど我慢してこれだけの保険料を払い続けるのだろうか。これだけのカネがあれば、車が何台も買えるし、好きなプロ野球やJリーグチームの年間シートも手に入る。もちろん家族揃っての海外旅行も何回もいける金額だ。そうした楽しみを我慢して払っている金だ。もちろん病気やケガは誰の人生にも降りかかる。手術や入院などをすることも当たり前だ。その時に医療保険による保険金でほっとした人もいるだろう。しかし、その後にムラムラとすることが襲いかかる。
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医療費控除の還付で起きるジレンマ
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