「絶対に選挙に落ちない男」はなぜ野党共闘に奔走するのか?『無敗の男 中村喜四郎 全告白』著者、常井健一氏に聞く

「選挙の鬼」と呼ばれた男

「日本一選挙に強い男」と呼ばれる中村喜四郎氏が再び注目を集めている。  1月14日には共産党の党大会にゲストとして出席し、野党共闘を訴え話題になった。  自民党を離党して無所属となり、さらには有罪判決を受けても選挙で負けず。初当選から現在まで14戦無敗という恐るべき強さだ。マスコミ嫌いとしても知られる中村氏を追い、その言葉を聞き出したノンフィクション『無敗の男 中村喜四郎 全告白』(文藝春秋)も、政治をテーマにしたノンフィクションとして非常に好調な売れ行きを見せている。 『月刊日本 2020年2月号』では、そんな『無敗の男 中村喜四郎 全告白』の著者、常井健一氏自身を直撃している。今回はそのインタビューを転載、紹介したい。

なぜ中村喜四郎に注目するのか

―― 常井さんの新著『無敗の男 中村喜四郎 全告白』は、中村喜四郎衆議院議員を題材としたノンフィクションです。中村議員は長らく沈黙を守ってきたため、中村さんのことを知らない人も多いと思いますが、なぜ中村さんに注目したのですか。 常井氏(以下、常井): 中村さんは80年代後半に「自民党のプリンス」として将来を嘱望され、43歳までに2度も大臣になりましたが、その直後の94年にゼネコン汚職で逮捕され、天国から地獄へと一気に転落します。この事件は、当時中学生だった私の政治家に対する考え方にも影響を与えましたが、中村さん自身は「過去」を一切語ってこなかった。そのため、ずっと描きたいと思っていたのです。  もう一つは、私は中村さんと同じく「自民党のプリンス」である小泉進次郎さんを10年にわたって追ってきました。小泉さんは当初は被災地や農村、過疎地などを隈なく回り、庶民に目線を合わせる心掛けを意識してきましたが、だんだん傲岸不遜になり、いまでは国民の信頼を失い始めています。なぜ「自民党のプリンス」と呼ばれる人たちは必ず躓くのか、その敗因を知るためにも中村さんを読み解く必要があると考えたのです。 ―― 中村さんは有罪判決を受けた後も、無所属で選挙に勝ち続けています。その強さの秘密はどこにあると考えていますか。 常井:選挙では普通、地元企業の社長や地元の名士を味方につければ、その下にいる人たちの票も取り込めると考えられています。これに対して、中村さんは企業のトップではなく、社員一人ひとりに頭を下げています。こうすれば、たとえトップにそっぽを向かれたとしても、大衆の支持が一度に離れることはないわけです。  実際、中村さんの後援会「喜友会」には大物支援者はいません。田中角栄の弟子でありながら、地元の建設会社が丸抱えするような「企業ぐるみ選挙」も排除しています。支援者たち自身、喜友会のことを「偉い人がいない組織」と言っています。  中村さんがどれほど真剣に一般有権者と向き合っているかは、たとえば弔辞にもあらわれています。中村さんはお葬式に呼ばれると、1時間近くも弔事を読むそうです。故人の生い立ちや仕事ぶりなどを調べ上げ、弔辞に盛り込む。参列した人たちは故人の回顧録を聞かされているような心地になると言っていました。こうした積み重ねが中村さんへの根強い信頼につながっているのだと思います。 ―― 中村さんの選挙の戦い方に、最近注目されているれいわ新選組と似ているところはありますか。 常井:れいわ新選組が熱心に取り組んでいるのはポスター貼りです。山本太郎さんに話を聞くと、「自民党や共産党のような古い政党がポスター貼りを重視しているのは、効果があるという証拠だから、自分たちもポスターを隈なく貼る」と言っていました。  他方、中村さんは無所属ですので、政党掲示板を設置できません。ゆえに茨城7区で中村さんのポスターを見かけることはありません。それでも「無敗」なのですから、衆院小選挙区で勝つ上でポスター貼りがどれほど役に立つかは疑問です。  また、れいわ新選組は全国遊説を行い、街頭演説の会場まで人々に足を運んでもらっていますが、中村さんは自ら有権者の生活の場に足を運び、一人ひとりとつながることを重視しています。「誰もいない場所で演説を続けられたら政治家として一人前だ」とも説く。人々に集まってもらうか、自ら足を運ぶかという点でも、中村さんとれいわ新選組は対照的です。
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いまこそ見直されるべき「竹下派の政治」
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月刊日本2020年2月号

●安倍政権の総辞職を強く求めるー本誌編集部
●安倍辞任こそ最大の改革だー元衆議院議員・亀井静香
●安倍総理は国民の耳に痛い話を避けてはならないー自民党元幹事長・石破 茂
●政権打倒のために野党勢力を結集するー国民民主党代表・玉木雄一郎
●安倍内閣は総辞職せよー政治評論家・中村慶一郎
【特集1】中東危機勃発―対米従属を止めよ!
【特集2】検察の暴走を許すな
【特集3】カジノが国を滅ぼす

●新連載 高野善一 遺稿『大隈と福沢』

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