地域のお金を外に出さずに循環させる「自治体新電力」
自治体新電力に出資する久慈市役所。再生可能エネルギーによる自給自足の先進地を目指す
環境省によると、岩手県久慈市のエネルギー代金の流出は約61億円(石炭・原油・天然ガス約8億円、石油・石炭製品約46億円、電気約5億円、ガス熱供給約2億円)。久慈市内の総生産は1178億円(2013年)。そのうちおよそ5%は、地域の住民や地元企業が支出したお金が域内で循環せずに一方的に域外へ、最終的には燃料費として中東をはじめとする国外に流出するという計算になる。地域活性化の分析に使われることが多い「地域内経済循環における地域経済の“バケツの漏れ”」である。
このエネルギー代金という“バケツの漏れ”は、久慈市だけではなく、原子力(ウラン)、石油、石炭、天然ガスなど海外からの輸入燃料に依存している日本国内であればどこでもあてはまること。この“バケツの漏れ”を最小限におさえ、地域に循環させる役割を担う、「自治体新電力」に期待が集まっている。
「自治体新電力」とは、自治体が出資などで関与し、限定された地域を対象に電気供給(小売り電気事業)を行う事業体である。地域の再生エネルギー電源などから電気を調達し、公共施設を中心とした地域の需要家に電気販売を行う。
その仕組みは「地産地消」「地消地産」という価値を生み出すことから、地域振興の視点から注目が集まっている。全国で設立が相次いでいて、東北では11法人が設立または設立予定だ(『河北新報』2019年3月14日付)。
久慈地域エネルギーは黒字決算で子育て支援に200万円を寄付
人口3万数千人の久慈市にある自治体新電力が、「久慈地域エネルギー株式会社」。2017年10月に発足した同社の資本構成(資本金1050万円)は、地元の建設会社の宮城建設など久慈市内の民間企業5社と自治体(久慈市の出資は50万円)。久慈市内資本100%の電力小売会社だ。
同社は久慈市および久慈商工会議所と「エネルギーの地産地消による地域活性化に関する協定」(2018年1月)を締結し、2018年2月には経済産業省の小売電気事業者認可を得て、2018年6月に久慈市の主な施設と出資企業を中心に電力供給を開始。2019年4月からは一般家庭への販売を開始している。
発足後初の通年決算となった2018年度決算は、売上高が1億6320万円、営業利益は1218万円、純利益920万円の黒字となり、市の子育て支援策として200万円を寄付している。