トランプによって、中東の「作られた緊張」は11月まで続く可能性も!? 有事の投資法はどうするか

[中東リスク]に備えろ!  米国とイランの対立をきっかけに、金や原油価格が急騰している。一時の狂乱的な買い漁りは収まったかに見えるが、今後も中東情勢は予断を許さない状況だ。そこで今回、「有事」に備える資産防衛を考える。

米・イラン関係悪化で金、原油は続伸必至?

 1月3日、米国がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官殺害を発表すると、世界の市場で一気にリスクオフの動きが広がった。3日のNYダウは3日ぶりに反落し、前日から233.92ドル安と大幅に急落。外為市場では“避難通貨”の円が買われ、一時は1ドル=107.64円の円高となったが、その一方で急騰したのが「有事の金」だ。3日、金価格は1トロイオンス=1552.30ドルと昨年9月以来の高値を付けたが、供給不安が生じた原油も1バレル=64ドル台に突入。’73年に勃発した第4次中東戦争や’03年のイラク戦争など、過去に起きた有事の際も金や原油価格は高騰したが、今回はイランによるイラク米軍施設への報復攻撃が限定的だったこともあり、リスクオフ・ムードは一時的に収束したかのように見える。
直近3か月の金価格の推移

1月6日、東京金は5309円から5473円に急騰。続伸したが8日のイランの報復で幕引きムードが広がり、9日に5453円まで下落した

 ただ、米国とイランの対立が予断を許さない状況のなか、市況への影響はどれほどのものなのか? 楽天証券経済研究所のコモディティアナリスト・吉田哲氏が話す。 「実は、金は昨年8月から、原油は昨年12月からすでに上昇しており、金が値上がりした要因のほとんどはトランプ大統領にあると言っていい。対北朝鮮政策でも有事ムードは高まっていますし、米中対立をはじめとする世界経済の不透明感から、各国の中央銀行が金保有高を増やし、代替資産の金に資金が流入しているのです。また、FRBの利下げで弱含み金に上昇圧力がかかった。上昇要因が複数同時に発生しているところに今回の衝突が契機となり急騰を招いたと見ていい」

大統領選まで「作られた緊張」が続く可能性も

 “トランプ・リスク”が世界経済の不安定要素となっていると分析するのは吉田氏だけではない。ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏が続ける。 「彼が大統領でいるうちは、金は安全資産であり続けるでしょう。一方、原油は事件直後に急騰したものの、落ち着きを見せている。というのは、現在の原油上昇は、OPEC(石油輸出国機構)が減産に舵を切ったことが主な原因だからです。米国がこれまで中東にコミットしてきたのは、石油権益のためだったが、シェールガスが採れる今、かつてほど中東に関心はなく、トランプ大統領に至っては端から興味がない。ただ、トランプ大統領は選挙を見据え強硬姿勢を打ち出していくでしょうし、再選のために株高を維持しようとするので、市場を壊すようなことは絶対にしない。大統領選の11月までは、『つくられた緊張』が続くでしょうね」
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「有事」に備える投資法とは?
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