「桜を見る会」の実態を知らなかったからこそ立ち上がった問題意識ーーしんぶん赤旗日曜版・山本豊彦編集長との対談を振り返って(第2回)

現地で後援会関係者に取材

 ネット情報を集めたうえで、山本編集長らのチームは、安倍首相の地元の山口県に現地調査に出向くことにした。  のちに山本編集長らは、安倍事務所による「『桜を見る会』のご案内」という文書を入手することになるのだが、昨年10月13日の日曜版スクープの段階、そして昨年11月8日の田村議員の質疑の段階では、この文書は入手できておらず、集めた証言をもとに記事を書き、質疑に臨んだという。
「桜を見る会」ご案内1

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「桜を見る会」ご案内2

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 昨年11月8日の田村智子議員の質疑において、「安倍事務所に申し込んだら内閣府から招待状が来たという証言を、複数の方から得ている」との指摘に対し、安倍首相は、「赤旗の取材に、私の後援者が答えたということは、私も寡聞にして存じ上げないのですが」と笑いながら答弁していた。  では、後援会の方々の証言を「しんぶん赤旗」の記者が得ることに、困難はなかったのだろうか。その点を尋ねたのが以下だ。 ********** ●上西:実際、聞いて取材したわけですよね。 ●山本:そうですね。 ●上西:それは、向こうは、警戒心を持ったりとかしないんでしょうか。 ●山本:まあ、安倍後援会の方も自民党のほかの先生と同じように、ブログなんか行ったっていうことを書いていて、まあ基本的には「ああ、なるほど」という確証ができたんですけど、やっぱり同時に、まあ、一国の総理を、疑惑を追及するには、証言も取らないとダメなんで、だいたい複数、延べ4、5人の記者で2週間くらい、地元に入りまして、なかなか、総理の地元なんで、赤旗の記者が行って、すぐに「そうですよ」というふうに答えるわけでもなく、なかなか最初は大変でした。  ただ、地元山口にも共産党の市議さんだとか県議さんとかいう方もおられまして、やっぱりそういう方っていうのは、安倍さんの後援会なんかにも、いろんな繋がりなんかもあったんですよね。 ●上西:地域のなかでの、ね。 ●山本:そうですね。そういう方の力もありまして、重い口がなかなかいままで、我々だけじゃ難しかったのが、しゃべる方も出てくるようになって、同時に、記事にも書いたんですけど、皆さん、後援会行事だって思っている人も、いっぱいいたんです。 ●上西:お金も払っているしね。旅行代金を払っているので。 ●山本:でまあ、最初の関門がちょっと取れると、「いやいや、行ったわよ」「毎年、私、行ってるわよ」「ちゃんとお金も払ってるし、後援会の行事で楽しいわよ」というふうに、結構、話してくれるような方も出てきまして。  そういう意味でいうと、前も言いましたけれど、関係者が圧倒的に、安倍さんとこで言うと、800人近くが、毎年行っているわけだから、行ったことある人は、山ほどいるんですね。  あとやっぱり、それぞれが、悪いと思ってないんで、結構、しゃべってくれるという中で、いろんな証言が取れて、それが田村さんの質疑に結び付いた。 **********  ここも興味深い。やはり、総理の地元の後援会関係者が、赤旗の取材にすんなり答えてくれるわけではなかったようだ。しかし、山口県の日本共産党の市議や県議に、安倍首相の後援会の方とのつながりがあり、それらの方の力があって証言が取れたという。

国会議員の質疑を支える人たち

 日本共産党は、国会議員の数はさほど多くないが、各地に地方議員がおり、彼らを支える党員がいる。そういう地方議員の厚みが、「しんぶん赤旗」の取材時に活かされたということだろう。また、購読料で支えられている機関紙「しんぶん赤旗」だからこそ、時間をかけて一つの問題を集中的に調査・取材することができ、地方議員の協力も得られた、とも見ることができる。  1月6日の山本編集長との対談の中では、国会議員の質疑はその議員本人の準備の力だけによるものではなく、様々な人の力によって支えられていることを、次のような一覧表を作って示してみた。

<国会議員の質疑を支える情報収集>

(1) 議員による官僚への資料請求やレク(説明)要求 (2) 野党合同ヒアリング (3) 国会図書館調査員 (4) 委員会調査室調査員 (5) 議員による現地調査などの独自調査 (6) 秘書 (7) 地方議員 (8) 関係者、労働団体、専門家 (9) しんぶん赤旗 (10)その他  このうち、(7)の地方議員が、今回の証言を集めるにあたって、「しんぶん赤旗」の記者と安倍首相の後援会関係者をつなぐ重要な役割を果たしたと言える。  また、(9)にあげた「しんぶん赤旗」のように、党として独自の報道機関を持ち、調査や取材ができる記者を多数抱えていることは、日本共産党の議員の活動を大きく支えていると言えるだろう。  なお、(10)のその他としては、内部告発も結構ある、とのことだった。 ********** ●山本:後は、内部告発なんかも、共産党の議員には寄せられるケースも結構ありまして、これまでもいろんな防衛省がらみのことなんかも、結構やってますね。  やっぱり、一つはまあ、そういうことを委ねて安心……。 ●上西:自分の身を守りつつ……。 ●山本:そうですね。守りつつ、きちんとやってくれると。で、しかも、きちんとそれを握りつぶさないと。しかもちゃんと角度がわかって、鋭くやってくれるという、多分、信頼だと思うんですけど、やっぱりそれは、赤旗なんかも、内部告発っていうのは寄せられます。 **********  内部告発者を守る、情報を握りつぶさない、その情報の重要度がわかったうえで、鋭く切り込んでくれる、そういう信頼があってこそ、内部告発が寄せられるということだろう。
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積み重なってきた証言
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