「桜を見る会」の実態を知らなかったからこそ立ち上がった問題意識ーーしんぶん赤旗日曜版・山本豊彦編集長との対談を振り返って(第2回)

証言を積み重ねる

 話を戻そう。山本編集長らが現地で証言を集めていくと、前夜祭や東京観光と「桜を見る会」が一体となって参加募集されており、貸し切りバスを連ねてホテルから会場の新宿御苑へと出向いていたこと、後援会旅行の目玉が「桜を見る会」であったことが見えてきた。  それは山本編集長にとって、「すごいことになってきたぞ」という、その後の展開を予感させるようなものであったようだ。 ********** ●山本:証言の中で、安倍事務所から参加の問い合わせがあって、それで、安倍事務所に申し込むことによって、後から内閣が送られてくるというのを、最初、聞いた時はですね、「えっ、そんなことがあるのか」と。  一応、内閣府主催の行事じゃないですか。その参加申し込みの窓口が安倍事務所になっているっていうのは、にわかにちょっと信じられなくて、「いやいや、もうちょとそれは、取材して、一人だけじゃダメだ」と言って、何人も取材をしていって、それが、異口同音に皆さん、そう言うんですね。で、それは絶対にペーパーが残っているはずだからと、それも探したんですけれど、残念ながら、皆さん、ファックスとかで事務所に送るんですよね。だから「自分の手元にはない」というふうに言われていて、それで、ペーパーまでは手に入らなかったんだけれど、どうも間違いなく窓口は安倍事務所になっている。  ということで、「あ、これはちょっと、すごいことになってきたぞ」ということがわかってきて。  しかもそれが、後援会旅行っていうことで、例えば、行くのは宇部の空港から、飛行機でみんなで行って、降りると貸し切りバスで、それで都内のいろんなツアーをやって、で、その 夜は前夜祭と。次の日は、ホテル前からバスで10何台で行く、という全体の構造がわかってきたんで、「なんだ」と、これは。後援会旅行の目玉が、「桜を見る会」だという。 ●上西:そうですね。田村議員も言ってましたね。 ●山本:そのへんがわかってきました。まあ、非常に驚きましたよね、実際は。 **********

「私物化」という本質を見抜く

 さきに、「安倍首相の私物化」として、「桜を見る会」の取材をやろうと決めた、という山本編集長の語りを紹介した。「桜を見る会」の支出と参加者の膨張を「私物化」という観点でとらえたこと、そしてそれが、森友・加計問題とも共通する安倍政権の本質であると見極めたこと、そこに山本編集長の着眼点の確かさがある。  それは、漫然と「桜を見る会」を取材しているだけでは、見えてこないことだ。また、大手紙の政治部の記者らにとっては、それは驚きをもって受け止めることができず、自明視されていることであったかもしれない。山本編集長は語る。 ********** ●上西:大手メディアはなんで、「桜を見る会」を取材をしていたのに、こう本質的な問いを立てられなかったのかと。「こんなことやってていいんですか」っていう問いは立ってなかったんでしょうか。 ●山本:前、田中角栄元首相の金脈問題が出たときに、この問題も結構、私たちの先輩の赤旗記者とか、あと週刊誌なんかが発掘して問題になったんですけど、その時に、特に政治部の記者なんですけど、大手紙の、「まあ、こんなことはもう知ってるよ」と。「角栄さんが、カネに汚いことは」って言ったんですけど、やっぱりそういう感覚っていうのは、まだ残ってるのかなと。  たぶん、安倍さんなんかについても、「安倍さんがそれって私物化しているのはまぁ知っているよ」と、まあそりゃ、皆さん前夜祭だとか、あるいは「桜を見る会」自身も行っているので、ただやっぱりそこで、その私物化っていうのが、安倍政権の手法のひとつの本質、森友・加計、これだけじゃなくて、例えば憲法なんかを見ても、歴代自民党政権でさえ集団的自衛権は行使できないと言っていたのを、閣議決定だけで、それができるようにすると。  まぁ、これはある意味で言うと、憲法の私物化ですから、やっぱり私物化っていうのが、安倍政権のひとつの本質だっていうのところを、きちんと見抜くかどうかってのは、非常に大きいんじゃないかというふうに思います。 ●上西:そう。だから、政治部の記者は「もう、そんなの知ってるよ」かもしれないけれども、国民は知ってて納得して支持しているわけではないんですよね。安倍政権を、ね。  だから、そこを改めて掘り起こしてみて、「それでも支持するのか」っていうふうになると、そこは変わってくると思うんですよね。 **********
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