田村智子議員「桜」質疑はどう組み立てられたか?ーーしんぶん赤旗日曜版・山本豊彦編集長との対談を振り返って(第1回)

Part5:「安倍晋三後援会」主催による前夜祭とセット

 Part5になると、田村議員はさらに踏み込み、「桜を見る会」の前日に毎年行われている「安倍晋三後援会」主催の前夜祭と税金を使った公的行事である「桜を見る会」が、後援会旅行の中で「セット」であったことを示していく。  ここで再び用いられるのは、「しんぶん赤旗」日曜版の若手記者らがネットから集めた情報だ。  藤井律子・山口県周南市長(当時は県議)の2018年5月4日のブログには、「今日は山口県からたくさんの人が来てくださっているわね、10メートル歩いたら山口県の人に出会うわよ」という片山さつき議員の語りが紹介されている。さらに前述の友田県議のブログには、前日の早朝に飛行機で上京し、夜には、ANAのインターコンチネンタルホテルの大広間において、下関市、長門市、そして山口県内外からの招待客約400人による安倍首相夫婦を囲んだ盛大なパーティーが行なわれ、翌朝7時30分にホテルを出発し貸切りバスで新宿御苑にと続いていたことが紹介される。吉田真次・下関市議会議員の2019年のブログにも同様の記載がある。  これらを紹介したうえで、田村議員は安倍首相に、 「桜を見る会は、安倍晋三後援会、桜を見る会前夜祭とセットで、総理が後援会や支援者、山口県の関係者の御苦労を慰労し親睦を深める、そういう行事になっているんじゃないですか」 と問うた。  しかし安倍首相は「個々の個人名等々については、お答えは差し控えさせていただきたい」と答えるのみ。  そこで田村議員はさらに、大手メディアが把握して公表している「首相動静」を紹介する。この3年間は「桜を見る会」の前日には、ホテルニューオータニの宴会場で安倍晋三後援会、桜を見る会前夜祭に出席とあること、それ以前も、ホテルや名称は異なるものの、必ず前日夜は後援会の方々と懇親会、宴会に安倍首相は夫婦で出席していることを指摘する。  そして、防府市ライオンズクラブの会報への寄稿から、2019年の前夜祭の参加者は約850人で、翌朝に貸切りバス17台で新宿御苑に移動していることが紹介され、前夜祭と「桜を見る会」がセットで安倍総理の後援会の一大行事になっていることを指摘した。  これに対し安倍首相は、前夜の懇親会に出席していることは事実と認めつつ、上京の費用は各自が負担し、「ホテルとの関係においても、それはホテルに直接払込みをしている」と答弁している。これは前夜祭の費用の記載が後援会事務所の報告書にないという政治資金規正法にかかわる問題となっていくのだが、その点はここでは省略する。

Part6:開門前に後援会関係者が会場に

 Part6は最後のパートだ。前夜祭と「桜を見る会」が後援会関係者を招待するセットのプログラムであることを田村議員はさらに証拠をもとに指摘していく。ポイントは、開門前に後援会関係者が新宿御苑にバスで入り、安倍首相と写真撮影していたという事実だ。明らかな「特別扱い」と言える。  大手メディアが公表している「首相動静」によれば、2019年は、午前7時48分に安倍首相は夫妻で新宿御苑に到着し、7時49分に昭恵夫人とともに地元の後援会関係者らと写真撮影していること、毎年、午前8時前に地元後援会関係者らと写真撮影されていることを指摘した上で、田村議員は、「桜を見る会」の開門及び受付時間は午前8時30分だと指摘し、「まさに後援会活動そのものじゃないですか」と指摘する。  ここはぜひ映像をご確認いただきたいが(前述した2019年12月24日の国会パブリックビューイング緊急街頭上映の映像では42分18秒より)、安倍首相は大塚官房長のほうを4度にわたり指差しして、答弁させようとする。蓮舫議員ら野党の理事たちが「それはダメ」と委員長席に駆け寄るが、先に大塚官房長が答弁してから安倍首相が答弁すると押し切る。  しかし大塚官房長の答弁は、桜を見る会の開園時間が午前8時半から午前10時30分の間の随時入園参観だというもの。全く答えになっていない。そのうえで安倍首相が答弁に立つが、 「招待者の、そのそれぞれの受付時間の対応に関するこの情報につきましては、これはセキュリティに関することであるため回答を差し控えさせていただきたい」 と、「セキュリティ」を理由に答弁を拒否する。なぜ安倍首相が後援会の関係者と一緒に写真を撮っているのかと問われても 「これについては、どういう形で私が動くかということにも関わってまいりますので、セキュリティに関わることでございますので回答を控えさせていただきたい」 と、またしても「セキュリティ」を理由に答弁を拒否した。  そのあとが見ものだ。田村議員はその「セキュリティ」という言い訳を、こう覆す。 「しんぶん赤旗の取材で、下関市の後援会の男性、到着すると、安倍事務所の秘書らがバスの座席を回って入場のための受付票を回収する、その秘書が受付を済ませ参加者用のリボンを配る、まとめてのチェックインで手荷物検査はなかった。何がテロ対策を強めたですか」 「開門前に手荷物検査もしないで大量に入ったら、それこそセキュリティ上の問題じゃないですか」  なかなか痛快な展開だ。  質問時間の終わりが迫る中で、田村議員はこう質疑を締めくくっている。 「桜を見る会は参加費無料なんですよ。会場内でも無料で樽酒その他のアルコール、オードブルやお菓子、お土産を振る舞うんですよ。これを政治家が自分のお金でやったら明らかに公職選挙法違反。そういうことをあなたは公的行事で税金を利用して行っているんですよ。これだけの重大問題だと……まさにモラルハザードは安倍総理が起こしていると、このことを指摘して、質問を終わります」
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欺瞞だらけの安倍首相らを追い詰めた質疑の背景
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 第2回は昨年11月8日の質疑に生かされた昨年10月13日のスクープが、どのような問題意識のもとに、どうやって調査・取材されたのかを振り返る。毎年の「桜を見る会」を取材していた大手メディアではないからこそ、問いが立ったという点に注目す、第3回は、昨年10月13日の「しんぶん赤旗」日曜版のスクープに他紙が追随せず、田村議員の昨年11月8日の質疑に対しても当初、大手メディアの注目が遅れたのはなぜかという、既存メディアの問題を考察する。近日公開予定
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