香港の若者たちはなぜまだ立ち上がれるのか? 彼らを支えた「ツール」<日本人がまだ知らない香港デモの実像>

真っ直ぐにカメラを見るデモ参加者の若者

香港に学ぶ新時代のヒント

 2019年6月からの半年で7000人以上の逮捕者と莫大な数の疑惑、負傷者、死者行方不明者を出した一連の反送中デモは法案廃案後、五大要求を掲げ、2020年も収束する気配がない。  彼らがなぜ立ち上がり続けるのか。  世界へと爆発的にシェアされたこの運動の新時代性について、香港市民たちの言葉とともに見つめた。 香港デモの様子 香港デモの様子2

be water, my friend 流動体としての枠組み

リーダーを作らない連帯 ◆「また立ち上れるとは思ってなかった」  ある20代香港人青年Aが言った。 「2015年の雨傘運動の終焉はひどかった。民主派と呼ばれる人々同士の派閥や世代間にいくつものくさびが打ち込まれ、皆、疲労でボロボロだったし、互いへの不信感でばらばらになった。あれから4年。確かに学んだことは多いが、それ以上になぜ立ち上がれたのか?なぜここまで自分たちがタフに行動を続けられるのか?  自分たちも明確にはわからない。  とにかく、眼の前の日々に噛り付いてきただけだ」  驚くことに、これは自分が話を聞いた香港市民たちに誰しも一致した見解だった。 ◆be water, my friend 香港デモ 香港デモ 香港デモ  2019年7月の立法会突入後から、この運動のテーマとなったこの言葉を彼らは驚くほどに体現していた。 「水になれ」--。  こだわらず固執せず、柔軟に臨機応変に、その場その場の答えを求めカタチを変えていく。私はそう捉えているが、これは見方を変えれば、その場しのぎの無責任な行動にもつながりかねない。  柔軟である反面、流動的で危険な賭けでもあるように見える。
次のページ
テクノロジーが繋ぐ、新しい思考と行動
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会