インポッシブル・バーガーに使われている「大豆レグヘモグロビン」の安全性は!?
温暖化対策だけではなく、米国の国民病とも言える肥満を解消するためにも植物ベースの食肉の開発は歓迎されるべきこと。しかし市民団体等が懸念しているのは、インポッシブル・バーガーに使われている、
遺伝子組み換え酵母による「大豆レグヘモグロビン」の安全性だ。
大豆の根粒に含まれる大豆レグヘモグロビンはヒトが食品として食べてきたものではないため、FDA(食品医薬品局)の安全審査が必要なはずだ。しかし「インポッシブル・バーガーを開発したインポッシブル・フーズは、
FDAの承認を得ずに販売している」と米国の市民団体は指摘している。
また、遺伝子組み換え酵母は大豆レグヘモグロビンを生成する時に他の約40種の物質を生成するとされていて、それらの中にアレルギーを起こす物質が含まれる可能性も懸念されるという。これは、30年以上前に遺伝子組み換えによるトリプトファンが開発されたとき、混じっていた不純物によって死者や健康被害が多発した事件があったからだ。
FDAの添加物の安全評価では新規食品添加物の場合、市販前承認が義務づけられている。しかし、制度ができるずっと以前から安全に使われてきたという歴史がある物質については市販前審査を免除するという「GRAS規定」がある。GRAS資格を有するには一般に承認されていることが必要とされている。
インポッシブル・フーズはFDAにGRAS通知を提出、その中で「大豆レグヘモグロビンは安全とみなされるほかのグロビンと化学的に類似しているので同程度に安全」と安全性の理由を説明しているという。
市民団体の懸念をよそに、インポッシブル・バーガーはいまや高級レストランで食べられるほかスーパーマーケットでも購入できるようになってきている。
タイソンが開発した植物ベースのチキンナゲット。主原料はエンドウたん白
植物ベース肉の人気を見て、ホーメル・フーズ、タイソン、スミスフィールドなどの大手食肉メーカーまでが参入をし始めた。ホーメル・フーズは非組み換え大豆を使い、保存料、コレステロール、グルテンフリーの低カロリーパティを開発、スミスフィールドはフレキシタリアンをターゲットに数種類のパティやミートボールなどを販売している。
今年12月にスペイン・マドリードで開催された国連気候変動枠組条約締約国会議(COP25)では、世界各国がますます厳しい温暖化対策の実施を求められている。こうした中で、肉食を控えようとするフレキシタリアンがさらに増えると考えられる。大手食肉メーカーも、食肉一辺倒からの方向転換を余儀なくされているのかもしれない。
【どうなる食と農 第1回】
<文/上林裕子>