「〇〇を食べれば、がんが治る」は誤り! 最新のがん治療の知られていない現実

ネット上の情報は玉石混交

病院イメージ2――最近ではネット上にある医療情報の不正確さが問題になることもありますよね? 村上:ネット上の医療情報、とりわけがん情報の質は玉石混交です。がんの場合、全容が完全には解明されていないことに加え、病状次第で命にかかわることから、患者さんやご家族はまさに「藁にもすがる」思いです。  こうした人たちを対象にビジネスを想定している側、もっと口を酸っぱくして言えば、患者さんやご家族を食い物にしようとしている側にとって、ステマも可能なネットでの情報発信は手っ取り早いのです。非常に由々しき事態なのですが、それが現実です。  がんになったご家族を抱えた経験のある方が「患者や家族が藁にもすがる思いになる気持ちは良く理解できるが、本来、藁などにすがらせてはいけない」とおっしゃっていたのが印象的だったのですが、まさに今回の執筆の際、常に念頭に置いていたのは同じ思いです。  ちなみにこの方のご家族の場合、当初は手術が不可能な状態でしたが、標準治療だった抗がん剤が有効性を発揮して手術にこぎつけたそうです。ただ、この「標準治療」という文字が時に誤解を招くこともあります。

医療での「標準治療」は現在の「最高・最適治療」

――誤解とはどういうことでしょうか? 村上:「標準治療」という言葉を聞くと、一部の人はなんとなく平均値的な治療というイメージを抱いてしまい、それより上の治療があるかのように思ってしまうのです。例えていうなら、「牛丼並」のような感じですね。さらにお金を出せばごはん大盛り、アタマ大盛りが食べられるイメージと言ったら良いでしょうか。  ですが、医療での「標準治療」は現在の「最高・最適治療」です。お金を積んでさらに上の治療を得ることはできません。  自分にスペシャルなものを追求する心理は、お金のある人ほど顕著ですよね。時折、有名人ががんで亡くなった訃報とともに、その方が怪しげながん治療に手を出していたという記事が出ることもありますが、まさにこの心理なのだと思います。  ただ、厳しい言い方をすると、ことがん治療ではスペシャルなものを求めることはお金、時間の無駄だったりします。むしろ標準治療を受けている方が、がんが進行した時でも新たな治療チャンスが得られる可能性が高いのです。
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延命治療はいま大きく変化している
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