「公共」を意識した番組作りを。『ハイパーハードボイルドグルメリポート』テレビ東京・上出遼平氏<新時代・令和のクリエイターに聞く2>

上出遼平さん 取材ディレクターがたった一人でハンディカメラを持って世界各地の被写体に迫るドキュメンタリー『ハイパーハードボイルドグルメリポート』。2017年10月に放送されるや否やTwitterで話題が沸騰しギャラクシー賞を受賞。貧困、内戦、難民、児童労働などに翻弄されながらも逞しく生きる人々の姿を描いています。  そんな同番組の過去作の連続放送が2020年1月1日から3日に決定。放送に先駆け、番組の企画・演出・ロケまでしているテレビ東京の上出遼平さんに番組の制作経緯、コンセプトなどについてお伺いしました。

海外では「ゴンゾ―・ジャーナリズム」の声も

――視聴者の反応はいかがでしたか?  「考えさせられた」というのが一番多かったですね。 ――海外での反響はいかがですか?  Netflixでの配信が始まってから、アメリカでは英語のまとめサイトも作られました。アメリカではこの番組を「ゴンゾー・ジャーナリズム」だと書いてくれた人たちがいましたね。ゴンゾ―・ジャーナリズムは異端のジャーナリズムと言われています。正統派ジャーナリズムは事象を可能な限り客観的な視点で伝えようとしますが、ゴンゾー・ジャーナリズムは取材している人間が一人称で存在します。その事象を目撃している人間の存在を隠しません。  日本ではその批評はありませんでした。どちらかと言うと、むしろ取材者の僕が消えているというものでした。これは多分、『ハイパー』を「ジャーナリズム」として捉えるのか「エンターテインメント」として捉えるのかという違いによると思います。  アメリカの視聴者のようにこの番組を「ジャーナリズム」として見れば、当然カメラを抱えた僕(ディレクター)の存在が際立って見える。それは、実はこの番組の本質が“出会いの物語”だからです。一方日本の視聴者のようにこの番組を「エンターテインメント」として見れば、僕の存在が小さく感じる。なぜなら本来はタレントがそこにいるはずだからです。 ――香港の回も見ましたが、政府に対して抵抗する若者の「自分のホームを守りたい」という熱い思いが伝わってきます。若者の政治に対する意識の高さが全く日本とは違いますが、日本と他の国の人たちの政治に対する意識の差についてはどのように感じていますか?  取材で様々な国に行きましたが、世界中のどこの人たちも老若男女が政治について当たり前のように喋りますね。  日本は若い人たちだけではなく、年配の方もやはり政治について語りたがらないように感じます。それは長い期間、考える必要がない状況にあったという意味では幸せなことなのですが、取り返しがつかなくなったときにはもう手遅れですよね。為政者は大事なことほど隠したがりますから。  これが今の日本に突き付けられている課題で、今まで大丈夫だったからこれからも大丈夫でしょうという根拠のない楽観がじわじわと我々の将来を蝕んでいるんだと思います。  そういう時にテレビが「今大変な状態かもしれません」と言うべきだと僕は考えています。  本来、メディアは国民に何かを知らせるために存在しています。しかし最近のテレビを見ていると、むしろテレビが何か大事なことを隠すことに加担しているんじゃないか、そんな風に思えることさえあります。メディアがプロバガンダに身を落とすなら、もはや存在意義はないでしょう。
(c)テレビ東京

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 ――小籔千豊さんのコメントが番組を見た後のやるせない気持ちを代弁してくれているような気がします。  タレントさんにはあまり精通していなかったのですが、多角的な視点で正直に話す人、責任感もって話してくれる人、自分事として捉える人というイメージを小籔さんには持っていました。  小籔さんには一視聴者としてVTRを見てもらっています。事前にどこの国の映像かも伝えていません。小籔さんには視聴者と一緒に苦悶して欲しいと思っています。実際、あのVTRを小籔さんなしで突き付けられたら視聴者の方もしんどいと思うのですが、「画面の中にも悩んでいる人がいる」と感じられるのは安心感につながるのはないかと。

大学では犯罪学を勉強

――大学卒業後、テレビ東京に入社されていますね。テレビ局への入社経緯についてお聞かせください。  大学では犯罪学や少年非行を学びました。そして、中国にあるハンセン病患者の隔離村にも行っていました。そうした経験の全てが『ハイパーハードボイルドグルメリポート』に集約されていると思います。  一時期、ほんの少しだけ非行に走った時期があって、いろんな人に迷惑を掛けました。  その当時はどうして意味のない、自分も周りも傷つくようなことばかりしているのだろうと悩みました。今思えば、そのとき自分が抱えていた数え切れないほどのコンプレックスがそういう形で現れたんだと理解できますが、当時は何もわからないまま、日々を過ごしていました。  そして大学に進学するとき、自分が何を学びたいかを考えました。いろんなことに興味はあったけれど、やっぱり一番の謎は自分自身の中にありました。何故自分は非行に走ったのか。  その理由を知りたくて、法学部に進学して、犯罪学や少年非行を学びました。小西暁和先生(現早稲田大学教授)という当時まだ若かった先生についてゼミ生4人でフィールドワークをしていました。
(c)テレビ東京

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 ――そうだったんですね。  日本中の少年院や刑務所、そして薬物中毒患者の更正施設であるダルクにも行って罪を犯した人たちと話をさせてもらいました。2010年前後は厳罰化の流れがあって、少年だからといって守るな!実名を公表して裁くべきだ!教育ではなく刑罰を!という声が高まっていました。そんな風潮に僕は強い危機感を感じていたんです。  “犯罪者”は本当に望んで罪を犯したのか—。それは故意や過失の話ではありません。表面に現れた犯罪行動だけを取り上げれば、そこには明確な故意があったとしても、その人のパーソナリティを掘り返すことによって、その人にとって抗いがたい何かがあったことが分かるかもしれない。その可能性に目をつぶって、まるで“生まれながらの悪人”かのように人を罰するのはスマートじゃない。そう思うようになりました。  彼らを罰するだけでは何も変わらないと思っています。彼らを悪い人ではなく可哀そうな人という扱いをしないと社会から外れていってしまう。そして、世の中は白黒はっきりしないものだともその時に感じました。そうであるならば、グレーの中の白っぽい部分を見つめてあげるべきだと。そんな風に大学時代はひたすら犯罪と向き合っていました。
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ハンセン病の患者が隔離された村で
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★2020 年 1 月 1 日(水・祝)27:50~29:11 「ハイパーハードボイルドグルメリポート」 #1・・・アフリカ元少女兵に密着&台湾マフィア組長は何を食う? #2・・・全米一危険な街で殺し合う極悪ギャング 双方のアジトに潜入!

★2020 年 1 月 2 日(木)25:25~27:00 「ウルトラハイパーハードボイルドグルメリポート」 #1・・・ゴミ山暮らしの若者飯&人食い山の炭鉱飯&密漁キャビア飯

★2020 年 1 月 3 日(金)27:00~28:21 「ハイパーハードボイルドグルメリポート」 #3・・・麻薬密売アパート&極寒シベリア山奥のカルト教団村に潜入! #4・・・中東から西ヨーロッパを目指す命をかけた不法国境越え


【イベント】
2020年 1 月 10 日(金) 「阿佐ヶ谷 Loft A」にて、 日本を代表する探検家・高野秀行氏をゲストに招き、上出 P の『ハイパーでハードボイルドなグ ルメ新年会』を開催! チケット発売中! 詳しくはコチラ→「Loftスケジュール

【配信】
◆Paravi ではスピンオフ「放送できなかったヤバい飯」全 5 話を含むシリーズ全作を配信中! さらに 10/14(月)オンエア最新作も独占見放題配信中! Paravi ハイパーハードボイルドグルメリポート#1~5
ウルトラハイパーハードボイルドグルメリポート#1~2 スピンオフ#1~#5) →Paranavi

◆以下動画配信サイトでも配信中! ※過去作の一部のみ配信
Netflix
Hulu
プライム・ビデオ

◎スピンオフ動画シリーズ#1「リベリア編」・#2「ロサンゼルス編」を配信! テレビ東京公式 YouTube チャンネル
◆これまでの作品◆
*ハイパーハードボイルドグルメリポート
#1・・・アフリカ元少女兵に密着&台湾マフィア組長は何を食う?
#2・・・全米一危険な街で殺し合う極悪ギャング 双方のアジトに潜入!
#3・・・麻薬密売アパート&極寒シベリア山奥のカルト教団村に潜入!
#4・・・中東から西ヨーロッパを目指す命をかけた不法国境越え
#5・・・アメリカ出所飯&ネパール火葬一家の飯

*ウルトラハイパーハードボイルドグルメリポート
#1・・・ゴミ山暮らしの若者飯&人食い山の炭鉱飯&密漁キャビア飯
#2・・・ギリシャ難民漂着飯&激動の香港デモ飯


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