「科学的・心理学的」という言葉を多用してもっともらしいことを言うインフルエンサーの不都合な真実<2>

「科学」の棍棒を振りかざす輩

論文引用と「科学的証明」に因果関係はない。くれぐれもご注意を
photo by Gerd Altmann via Pixabay

 こんにちは。微表情研究家の清水建二です。前回、「科学的・心理学的という言葉を多用してもっともらしいことを言うインフルエンサーの不都合な真実」と題し、そうしたインフルエンサーたちによって書かれた科学的に不正確な・不誠実な記事や書籍を見抜くTipsについて紹介しました。  本日は、そうしたインフルエンサーらが使う主な手法について、私の専門である表情研究の知見に寄せて紹介したいと思います。今回紹介する手法は、①私(あるいは私の関係者)が実際に会ったインフルエンサーの話、②インフルエンサーのブログ内容、③インフルエンサーの記事や書籍から類推できることを情報源に私が5つにまとめたものとなります。  さて、どんな手法が用いられているのでしょうか。上の項目ほど科学的に不正確・不誠実なものになります。  なお、本記事のインフルエンサーとは、科学を乱用・誤用しているインフルエンサーのことを差します。世の中にはそうではないインフルエンサーも存在していることを留意ください。

「科学」と「絶対」という言葉は水と油

手法1 言い切り・断言をする  インフルエンサーは自己の主張や記事のインパクトを強くするために言い切ります。自分の主張を絶対的なものにしたいため、相対的になってしまうような記述は避けます。しかし、科学的現象を言い切ったり、断言する文章は科学的ではありません。  「ウソつきの顔には、微表情が現れる。」という文言が断言です。科学的な文章ならば、「ウソつきは、正直者に比べて、微表情を見せる傾向にある。」、あるいは「ウソつきの顔には、微表情が現れる傾向にある。」となります。科学実験の要諦は、比較と傾向把握です。  例えば、ウソつき50人と正直者50人の表情を観察します。両者を比べたところ、ウソつき36人から微表情が検出され、正直者16人から微表情が検出されたとします。そこで、この実験をした科学者は「あ~なるほど、ウソつきは、正直者より微表情を多く現すようだな」と考えます。  インフルエンサーが、断言というものが科学の世界であり得ないことを知らないのか、論文を読んでいないので比較対象を知らないのか、読者にわかりやすく書こうとして比較対象を省略したのか、その理由はわかりませんが、科学的現象を言い切ったり・断言することは科学を正しく理解することを妨げる原因となります。科学と絶対という言葉は水と油なのです。 ●手法2 限定的な科学的知見だけで全体を説明する  インフルエンサーは自己の主張や記事の信頼度を上げるために、限定的な科学的証拠しかなくても、全体に当てはまるような書き方をします。例えば、私たちが本当に悲しいとき、額内側にある筋肉が収縮することで眉がハノ字になりやすくなります。この動きは意図的に動かすことが難しいため、本当の悲しみとウソ泣きとを区別する指標となり得ると言われています。  しかし、ここで、「この動きがなければウソ泣きだ。」と書いてしまうのは、科学的に不正確であり、不誠実です。子どもがいなくなってしまい、メディアに情報提供をしている親御さんの場面を想像してみて下さい。確かにハノ眉をして泣いている親御さんもいますが、ハノ字眉になっていない親御さんもいます。  泣いてしまえば、言葉が出ず、メディアに伝えたいことが伝わらないのは困ると考えれば、泣くのを我慢することもあるでしょう。泣くのを我慢すれば、表情筋の動きは抑えられ、悲しくてもハノ字眉にならないことが十分にあり得ます。  科学論文には必ず、どんな条件で導き出された結論なのかが書かれています。それを無視して、ある状況や条件下でしか有効ではない科学知見について、あたかもいつでもどこでも当てはまるような書き方をするのは、科学に対する冒涜です。

権威を利用した主張は科学的ではない

手法3 「有名大学・有名教授が提唱している」を強調する  自分の主張を権威付けしたいインフルエンサーは、「あの有名な大学が証明していることなんですよ」「この方法は、あの〇〇教授も提唱しているですから、間違いありません」とかいう文言をよく使います。科学の世界では大学名とか教授が有名とか関係ないです(全く関係ないと言うとウソになりますが、科学者も色々しがらみがあります)。  データとロジックが物を言う世界です。名も無き大学の若い研究者でもデータとロジックがしっかりしていれば、それを根拠に有名大学の権威ある教授の説に異を唱えることが出来ます。  表情研究の世界でいえば、ポール・エクマン博士が有名人です。表情研究について書いているインフルエンサーの記事の中には「エクマン先生が言っているのだから正しい」「表情研究はエクマン博士から学ぶしかない」という文言を見ます。  確かにエクマン博士が残した功績は目覚ましいものがあり、私もその恩恵を受けているわけですが、エクマン博士の研究以外、あるいはエクマン博士が引退した以降も表情研究の知見は様々な広がりと深みを見せています。データとロジックではなく、権威的な名前を利用した主張は科学的ではありません。
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論文を表面的に読み、知ったかをするインフルエンサーの手法
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