―― 安倍総理の総裁任期満了まで2年を切りましたが、安倍政権はどのような終わり方になると思いますか。
山崎:安倍総理がどんな辞め方をしても、無傷で済むことはまずないと思います。これは非常に難しい問題で、私が総理の立場でもどうしていいか分からないほどです。
重要なのは、2021年10月に衆議院の任期が切れるため、2年以内に総選挙があるということです。それゆえ問題は、自民党は誰をトップにして戦うのか、誰をトップにすれば勝てるのかということです。
仮に安倍総理が2021年9月の総裁任期満了で退陣した場合、新総裁はわずか1か月で総選挙を戦うことになりますが、それは無理です。
そのため、安倍総理は2020年中に岸田文雄政調会長にバトンタッチするのではないかとも言われていますが、岸田氏に対する国民の支持率はわずか数パーセントです。これでは岸田氏に禅譲しても総選挙を勝ち切れるとは思えない。
かといって安倍総理が自分で解散総選挙をおこなってから岸田氏を後継指名することもできない。安倍総理が選挙を打っても敗ける可能性の方が高いからです。
つまり安倍総理、岸田政調会長がトップでは次の選挙で勝てないだろうということです。ここから安倍総理が党内から退陣を迫られる可能性が出てきます。自民党内ではまだ「安倍4選」が既定路線であるかのような錯覚があるため、「4選になったらどうしよう、いま逆らうと大変だ」という空気が残っている。しかし、
すでに「安倍4選」の可能性はなくなりつつあり、潮目が変わろうとしている。
―― 自民党が次の選挙に勝ちたいならば、党内で反旗を翻すしかない。
山崎:それをできるのは
石破茂しかいない。現にそうしています。確かに石破氏は自民党内で強く支持されているわけではないが、国民からは強く支持されている。最近の世論調査では「次の総理」として石破氏への支持率が急上昇し、首位に立っています。
国民がこれほど石破氏を支持しているという事実は重い。なぜ自民党議員がそれに注目しないのか。石破以外に次の選挙で自民党が勝てる総裁がいるのか。数パーセントの支持率しかない岸田氏をトップにして総選挙を戦うという道はありませんよ。
なぜ石破茂には国民的人気、特に地方の人気があるのか。それは本人が地方出身であること、全国を回って絶えず地方創生の重要性を訴えていること、政界屈指の勉強家であることが国民から理解され、その熱意が国民に伝わっているからでしょう。
実際、石破氏の演説はずば抜けて優れている。他の「ポスト安倍」候補は迫力のある演説ができていない。明らかに勉強不足ですよ。
石破氏は小物ばかりの自民党の中で、総理の任に堪えうる数少ない人物です。肚を括って決起すれば、必ずや総理の座を手にするでしょう。しかし、ここで引き下がったらダメです。それでは「怯儒にして兵を引く」という状況になる。
私は石破氏に期待していますが、それは私情ではなく、将来は別にして当面の間は他に総理の任に堪えうる人材がいないと思うから、国の前途を憂いて言っているまでです。石破氏には是が非でも国家国民のために奮起してもらいたい。
(12月3日インタビュー、聞き手・構成 杉原悠人)