今、タイのガイドブックを開くと、その多くにバンコクの「
鉄道市場」、あるいはタイ語名の「
タラート・ロットファイ」の名前が見られる。タイ特集などの雑誌でも表紙になるなど、市場に隣接するビルから見下ろすとSNSに映えるような景色が見られるからだ。
ラチャダー「鉄道市場」はアンティークとは関係なく、この景色に人気が集まる
しかし、このガイドブックで話題になる「鉄道市場」、インスタ映えで有名なのは「ラチャダー」のものだが、ここは3箇所めで、元祖は、バンコク旅行で来た多くの外国人が訪れる「
チャトチャック・ウィークエンドマーケット」の辺りにあった。ウィークエンドマーケットでアンティークを売っていたタイ人商人が開設した市場で、のちに借りていた土地から出ることになり、バンコク郊外の2番目の場所「シーナカリン」に移った。こちらは最初と同じように今も週末開催で、またアンティーク市場の要素が強い。
最初に借りていた土地がタイ国鉄の所有地だったことから、
市場に列車がないにも関わらず「鉄道市場」という名前になっているという。ラチャダー鉄道市場はアンティークの要素すらほとんどないが、元々はタイ人の若者たちの間でじわじわと起こったアンティーク・ブームが発端というわけだ。
古いものに興味を持たなかったタイ人の間に起きた「骨董ブーム」
これまでのタイ人は古いものにあまり興味を持たない傾向があった。たとえば飲食店だ。日本なら100年以上営業していれば看板に書き込むくらいセールスポイントにするが、タイ人は仮に雑誌の取材であってもこちらから訊くまでその話をしないし、そもそも売りになるとは思っていない。
それが、スマートフォンが普及し世界中の情報が入るようになり、西洋のアンティーク家具や雑貨が若い人に注目され、さらに自国の文化もおもしろいと思う層が登場して、徐々にアンティーク、あるいは骨董品が人気になってきたのだ。そこには投資の目的もあるだろうが、古いものに見向きもしなかったタイ人が骨董品を見て回る姿はかつてなら想像もできなかった。
チャトチャック・ウィークエンドマーケットのほう、元祖「鉄道市場」はアンティークショップも多く、初代を今も踏襲している
そんなアンティーク、骨董品の発信地は、やはり「鉄道市場」発祥でもある「チャトチャック・ウィークエンドマーケット」だ。世界的にも有名な週末市場なので、ここに開設されて40年近くになる今でも買い手・売り手双方から人気がある。本格的なアンティーク関係の店はウィークエンドマーケット内ではなく、隣接するビル「
DDモール」内に多い。
週末になるとバンコクのアンティークファンが散歩がてらにここに集まってきていた。