夫婦間の「わかってくれて当然」はもうやめた。夫婦インタビューで良好な関係を築く

正面衝突は有効な一手。でもメンタルはやられる

 当時の私たちは、価値観の違いを「正面衝突」でわかり合おうとしていました。 「僕はこう思わない!」 「私はそう思わない!」 「僕はこれが嫌いだから、こうして!」 「私はそれが嫌いだから、やめて!」  こんなやりとりが続きました。  ポジティブなとらえ方をすれば、「もうこの人には何を言ってもしかたない」と諦めてしまうより、正面衝突した方がまし。一応は話し合っているわけですから。  同棲後まもない時期にたくさんぶつかり合ったことで、現在私たちが大切にする話し合い習慣ができた面はあります。  とはいえ、気持ちを思い切りぶつけ合うのは、メンタルが消耗するやり方でした。正論を伝えるのが正しいとは限りません。たまにぶつかるのは仕方がないことですが、あまりにも頻繁だと一緒に生活するのが嫌になってきます。そんな毎日が続いたらストレスでしかありません。もっと建設的なアプローチが好ましいですよね。

雨を嫌と感じる人もいれば、嬉しく思う人もいる

 入籍してからも私たちは正面から気持ちを伝え合ってきましたが、あるとき妻の提案を受け入れてからは、穏やかな意見交換へと変化しました。  妻の提案とは、夫婦で話し合う前に「そもそも自分が何にどんなことを感じているか」を探ろうというものでした。話し合いには、夫婦仲を良くする、気持ちをわかり合いたいといったいった目的があります。ゴールに到達するには、まず現在地を正確に把握しないといけませんよね。妻はここを重視していました。  妻は日頃から「人って、みんな違う辞書を持っている」とよく言います。育ってきた環境によって、ある事象について独自の意味づけをしてしまうことのたとえです。  わかりやすいように「雨」を例にとります。ある人にとっては、雨はうっとうしいもの、不快なものと感じることがあります。確かに濡れるし、傘が必要で荷物は増えますからね。  でも別の人にとっては、雨は嬉しい存在でもあります。雨具が大好きな人なら、お気に入りのレインコートの出番だと小躍りするかもしれません。  「雨とは嫌なもの」と辞書に書かれている人もいれば、「嬉しいもの」と書かれている人もいるわけです。何が正解か不正解かではなく、解釈の仕方が違う、ということです。    同じ「雨」でも複数の見方があることがわかります。このように、夫婦で話し合いたい事柄について自分がどんな意味づけをしているのかを探っていきます。  メリットは、自分の価値観を相手に押し付けにくくなること。ついつい自分の辞書に書かれていることが常識だと思い込みがちですが、相手は別の見方をしている可能性がありますよね。価値観の押し付け頻度を減らすだけでも、ケンカはずいぶんと減ります。
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