民族派右翼青年が「反差別」に立ち上がったワケ。「愛国とは日本の負の歴史を背負うこと」
『ネット右翼vs.反差別カウンター 愛国とは日本の負の歴史を背負うことだ』(にんげん出版)を上梓した。
『月刊日本 2020年1月号』に掲載された山口氏へのインタビューを転載、紹介したい。
―― 山口さんの新著『ネット右翼vs.反差別カウンター』は、在日特権を許さない市民の会(在特会)などと闘ってきた山口さんの活動記録になっています。なぜレイシストやヘイトスピーチと闘おうと考えたのですか。
山口祐二郎氏(以下、山口):私はもともと新右翼界隈で活動していたのですが、その中でヘイトスピーチを聞いたことはほとんどありません。むしろ「ああいうやり方はよくない」、「右翼の品格ではない」といったように、在特会に批判的な人たちのほうが多かったと思います。
しかしその一方で、一緒に活動していた仲間の中から、在特会に引き寄せられてしまう人も出てきました。彼らは既存の右翼活動に限界を感じ、在特会に新たな可能性を見出すようになったのでしょう。
右翼活動に疑問を覚えていたという点では、私も一緒です。毎日のように街頭演説をしても、聴衆はまったくおらず、ヤジを飛ばされるくらいで、効果が感じられないということを何度も経験しました。
しかし、私は韓国人や在日コリアンの人たちを差別しても日本が良くなるとは思いません。そもそも私が右翼業界に入ったのは、苦しんでいる人たちを助けられるような人間になりたいと思ったからです。そのため、なんとしてもレイシストやヘイトスピーチと闘わなければならないと考えたのです。
―― 山口さんは仲間たちとともに在特会のヘイトスピーチを体を張って食い止める「反差別カウンター活動」を始めました。なぜこうした形の活動を始めたのですか。
山口:一番のきっかけは、在特会が新大久保のコリアンタウンでヘイトスピーチを行っていたことです。彼らはヘイトデモのあと、「お散歩」と称して商店街を練り歩き、韓国人の店員に対して暴言を吐いたり唾を飛ばすなど、嫌がらせ行為を繰り返していました。
彼らに対して、いくら口頭で「やめろ」と言ってみたり、言論で批判しても、その行動を止めることはできません。嫌がらせをやめさせるには物理的に止めるしかありません。反差別カウンターをしたのはそのためです。
もっとも、私は韓国批判自体をやめるべきだと言っているのではありません。しかし、韓国を批判したいのであれば、たとえば韓国大使館に行ってしかるべき抗議をすべきです。一般の韓国人や在日コリアンに嫌がらせするのはおかしいと思います。
―― 反差別カウンターは在特会と激しくぶつかっていたので、「どっちもどっちだ」と批判されることも多かったのではないでしょうか。
山口:在日コリアンにヘイトスピーチをするレイシストと、それを阻止する反差別カウンターの思想は、明確に異なります。これはいじめの問題について考えればわかると思います。目の前でいじめが行われているとき、それを止めに入って相手と口論になったり、罵倒の応酬になった場合、どっちもどっちと言えるでしょうか。
また、私は右翼とは汚れ役になって世の中を良くする義賊的な存在だと考えているので、周りから批判されてもそれほど気になりませんでした。自分たちへの批判よりも、とにかく在日コリアンに対するヘイトスピーチを食い止めることを優先しました。
日韓関係が冷え込み、ネットなどで平然とヘイトスピーチがまかり通っている昨今だが、その一方で神奈川県川崎市が全国に先駆けてヘイトスピーチ禁止条例を可決するなど、日本でも「ヘイトスピーチ」というものの認識が高まりつつある。
そんな中、民族派の立場から一貫して反差別カウンター活動を行ってきた山口祐二郎氏が、その活動の記録である新刊体を張ってレイシストを食い止める
「どっちもどっち」論の的外れさ
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