エリート官僚の長男はなぜ家庭内暴力に走ったのか。エリート家庭の子ほど囚われる「自己不全感」という牢獄

自己不全感から荒れ狂う子を持つ親の苦しみ

「親は親、自分は自分」とその人生を切り離し、「オレはこれで満足だから」と自分のやりたいように生きる、という心の強さを持つ子弟のほうがむしろ少ないといえる。  一方で貧困に苦しみ、教育の機会すら与えられない子もいれば、反対にエリート家庭ゆえの自己不全感に苦しみ、人生の破滅を招く子もいる。あまりにやるせないが、これが今の日本の現実なのだ。  では、どうすれば長男はここまで荒れ狂わず、父親もわが子を手にかけずにすんだのか。そこに必要なのは「他人」だ。日本では「子育ては親の責任」という意識が強すぎるが、このような状況では長男は親から遠く離れて、自分のよい点を見てくれる他人のところで過ごすべきだ。できれば誰かの役に立つような仕事に就いて、すり減っている自尊感情を少しずつでも回復させていくことが望ましい。  “愛憎の圧力鍋”のような状態にならないよう、困っているケースほどお互い距離を置くべき。もちろん言うほど簡単には実行できないだろうが、「親が子を始末」などという悲劇を防ぐためにはそれしかない、と臨床経験を通じて強く思うのである。 <文/香山リカ>
’60年、北海道生まれ。東京医科大学卒業。立教大学現代心理学部教授も務める。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題を中心にさまざまなメディアで発言を続ける。音声アプリ「ヒマラヤ」で「香山リカのココロのほぐし方」を配信中。最新刊『オジサンはなぜカン違いするのか』
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