こうした状況に目を付けたのがストライプであった。ストライプは
地方百貨店の多くが百貨店商材の充実を図ることができないばかりか独自のECサイト整備も不十分であることに目を付け、子会社であるストライプデパートメント運営の百貨店向けネット通販
「DaaS」(Department EC as a Service)を開発。ストライプデパートメントは「DaaS」のシステムを用いて、
百貨店ごとにカスタマイズされた「各百貨店独自の百貨店アパレルを中心としたネット通販サイト」を運営する。各百貨店独自の通販サイトといえども、百貨店側のイニシャルコスト、ランニングコストはともに無料。売上はストライプデパートメント側に入るが、
百貨店側には登録者数と売り上げに応じた手数料が入る仕組みだ。
この「DaaS」を用いた通販サイトでは百貨店向けアパレルを中心に約1000ブランドを取り扱う。地方百貨店からの撤退が続く百貨店向けブランドはもちろん、人気のため地方まで届かない商品、地方では売り上げが見込めずに入荷されないような高級品・個性的な商品の販売もおこなわれている。地方百貨店にとってDaaSを用いた通販サイトの導入は、
地方店では陳列することができないような商品を補完する役割を兼ねることになる、という訳だ。
トキハ別府店のポップアップショップでは、普段は同店で販売されていないクロエやマルニのバッグ、サルトルのブーツなどが陳列され、興味深そうに眺める買い物客の姿が見かけられた。このポップアップショップはあくまでも「
ショールーミングショップ」。陳列されている商品もサイズやカラーバリエーションなどを豊富に取り揃えている訳ではなく、客はDaaSを用いたトキハのネット通販を通じて自分にあった商品を選ぶかたちを採る。
ストライプデパートメント・DaaSのシステム。
(ニュースリリースより)
このほか、ストライプデパートメントは
金沢市に本店を置く百貨店「大和」との提携も発表している。
大和は2010年まで新潟、富山、石川の3県に7つの大型店と複数の中~小型店を構えていたものの、現在の店舗は
金沢店、富山店の2店舗と小型店のみに縮小。大和はDaaSを用いた通販サイトを導入することで、このような百貨店が撤退した街の顧客に対しても「(DaaSを用いた)大和のECサイトで百貨店ブランドのアパレルを買うことができる」ということをアピールしていく狙いもあろう。
大和の小型店(サテライトショップやギフトサロン)のうち、一部はかつて大型百貨店があった都市でも展開されている。今後は、こうした小型店にポップアップストアを置き、かつての百貨店の顧客をECサイトへと誘導する試みもおこなわれるかも知れない。
8月に閉店した大和高岡店。12月現在、建物1階には大和の小型サテライトショップが設けられている。
DaaSのポップアップストアはこうした「百貨店が撤退した街」にも設けられる可能性があろう。
地方を中心に撤退を進める百貨店アパレルと、その穴埋めに苦悩する地方百貨店、そしてそれを商機と捉えて進化を遂げるECサイト。
実店舗にとってはライバルであったはずのECサイトが店舗の強い味方となるのかどうか、そして「実店舗に行ってわざわざ通販で買う」という手間が消費者に受け入れられるのか――今後の「成果」が注目される。
<取材・文・撮影/若杉優貴(都市商業研究所)>